■ 全速力デ逃走セヨ

私は最高速の速さで今、厨二病が住み着くヤンキー城へと来ていた。そう、来てはいるんだ。もう30秒前からついているんだ。…だが、


「…なんだこの寒気は。気持ち悪いなんてもんじゃない。気が狂いそうだ。今すぐ逃げ出したい。だめだ。だめだだめだだめだ!」


一歩城に近づくたびに鳥肌がざわり。それと寒気も一層増す。だめだ、ここに居てはいけない。刀なんてもう知るものか。さっさとここから立ち去ろう。命大事。

帰ろう。そう思い城に背を向けたとき―――やつは、きた。


「みぃぃいいいつぅうううぅうなぁぁあぁああぁありぃいぃいいいぃいぃい!!」

「!!!!!!!」


うわああああ暗黒大魔王がやってきたああああああこの寒気は貴様のせいか家康ううううううう!!

ホンダムに乗ってこちらへ飛んでくる姿はまさに悪魔!というかなんだその獲物を見つけた野生動物の目は!貴様自分の今の表情わかってるか?!英雄やら偽善者やら狸なんて言葉欠片も似合わない、むしろ獲物を見つけた腐女子並の表情してるぞ!?

遠くで厨二病が頭を下げてるのを目にしつつ、死ぬ気で、それはもう先程までのカサカサなんて目じゃないくらいに。忍である風の悪魔でさえ目を疑う程に。素早く。完璧に。目的地を決めて。相手に見つけられないよう森の中を通り。素早く。正確に。
走り出した。


「くっそおおおおぎょおおおおぶうううううたすけてえええええ!!」

「みぃぃいいいつううぅううなぁあぁあありぃいぃい!鬼ごっこか?ははっ受けてたつぞ!」

「!!!!!(ゴメーンこうなったらうちの竹千代手につけられんの!本当ゴメーン!!)」


なんとなくホンダムの謝る声が(まぁ幻聴だろうが)聞こえた気がしつつ、おい家康本来ならそれ叫ぶの私の役目だろと思いつつ、私は逃げた。



全速力デ逃走セヨ
(Ahー…すまねぇ石田。あいつに好かれたお前が悪ぃ)
(政宗様…さすがにこれは…)
(小十郎…あいつは人より先に行く存在だ。…石田、安らかに成仏しろよ)

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