■ 「彼女」は受け入れた

とある1人の女性は、とても優しいとはいえない子でした。人がどれだけ傷ついても関係なければどうでもいいのです。自分が傷つけられたら、倍返しする子なのです。

でも、その子はとある事件に巻き込まれ、他人に生まれ変わり、人を殺さぬと生きていけぬ世にきてしまいました。


女性はそんな世を肯定しました。

女性はそんな世を恐怖しました。

女性はそんな世を克復しました。

女性はそんな世で笑いました。

女性はそんな世で楽しみました。


女性はそんな世で、昔のように楽しみました。


女性は身分の違いを知りました女性は仕えることを知りました女性は迫害を知りました女性は裏切りを知りました女性は戦を知りました女性は殺しを知りました女性は肉を切る感触を知りました女性は人が弱いことを知りました女性は助けを請われることを知りました女性は偽り方を知りました女性は力を欲しました女性は情けを嫌いました女性は殺すのになんの感情も抱かなくなりました女性は人を嫌いました女性は人を無機物と同じ価値観でしか見てませんでした女性は嫌われることを望みました女性は仲間を捨てました女性は自分以外を切り捨てました女性は孤独が嫌いなことを知っていました女性は孤独を望みました女性は女性は女性は女性は。

女性はもう、どれが必要なのかわかりませんでした。


『怖くないよ』

女性はただいいました

『辛くないよ』

女性は笑顔でいいました

『痛いのは嫌だよ』

女性は刀を持ちながらいいました

『壊れてなんかないよ』

女性は血まみれになりながらいいました

『これが僕だ』

女性は刀をしまいながらいいました

『死んでもいいんだ』

女性は笑いながらいいました


『ここはこうゆう世界なんだろう?』

女性は、誰もいない暗闇に問いかけました。



『そうだな』

そう、“男”は女性に告げました。


『怖いはずがない』
『辛いはずがない』
『痛みなどどうでもいい』
『壊れるはずがない』
『それが貴様だ』
『あのお方のために死ね』


“男”は、女性の言葉を全て肯定しました。逃げ道をなくしました。

でも、


『理解できているなら、なぜ泣く』


“男”は笑顔の女性に問いかけました。女性はまた笑みを深くしました。にやりと効果音がつきそうな笑みで女性は笑いました。“男”はそんな女性をただ見てました。理解ができないといった風に、見ていました。


『もう怖くない』
『もう辛くない』
『もう泣かない』
『もう逃げない』
『ただそれだけだよ』
『怖かったし』
『辛かったし』
『逃げたかった』
『でも、もう慣れた』

『当たり前なんだよ、全部ね』


女性が言うたびに、“男”は眉間に皺をよせた。
“男”は、刀を握りながら女性を睨みつけ、いいました。


『なぜ貴様はそんなにも弱い』
『なぜ貴様はそんなにも落ちぶれている』
『不愉快だ』
『貴様は誰だ』
『一体誰でいたいんだ』
『生きる価値もない』
『死を選択する価値もない』
『肯定はするが否定もする』

『当たり前など、存在しない』


睨みながら、不愉快だといいながら、“男”は女性に言い聞かせた。女性は、また笑って、


『当たり前だよ』


とだけ言った。



“男”は、最後まで、睨んでいた。



「彼女」は受け入れた
(当たり前など存在しないなんて)
(当たり前じゃないか)
(全部理解し納得してるんだ)
((わかれよ、凶王))

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