■ 少し、昔のとある子供の話をしようか。

少し、昔のお話をしようか。


とあるところに、普通の家族がいました。
少しだけ貧しかったけど、それでも普通で普通などこにでもいそうな家族がありました。

そこの家には、2人の子供がいました。

2人はときに喧嘩しときに怒られ、そしてときに楽しく遊ぶ。そんな普通な子供でした。少し付け足すとすれば、他よりは2人の仲はよかったということぐらいです。


そして、例外を上げるとしたら1人は不登校で引きこもりだったということ。そしてもう1人は学校が大好きで人が大好きだということ。とくに1人は例外らしくはないのですが、その1人はとても優しすぎた子でした。エアガンで撃たれても、怒りはせど相手を殴ることまでに発展はしないのです。

1人はもう1人に問いました。「なぜ倒せる力をもっていながら使わないのか」と。
そしてもう1人は答えました。「だって、怪我をしてしまうじゃないか」と。

1人は理解ができませんでした。自分は怪我をさせられたというのに、仕返さないもう1人が理解できなかったのです。それと同時に、まぁこいつだからなぁ。という呆れにも似た感情もありました。それほどまでにもう1人は優しかったのです。


だからあの日も2人仲良く、楽しく、ゲームに勤しんでいたのです。

とても普通に、通常に、平凡に、一般的に。

だから2人は気付かなかった。それが運命の分かれ目だということにも。


『1人』を殺さなきゃいけなくなる時代に行くことにも。



少し、昔のとある子供の話をしようか。
(まぁ可哀想なことに)
(その殺さなきゃいけない1人が)
(『1人』のことだとは)
(2人共、気付いてはいないのですが)

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