■ 立ち寄った場所での遭遇

「親父ぃ!団子くれ!あんこで!」

「大将!団子くれ!みたらしで!」


ガラララッと凄い勢いでドアが開いたと思ったら笠を被った“黒髪の”若い男が2人。私は大層驚きつつもまず2人を席に座らせることにした。だが、店を見渡してみるがどうも1席しか開いてない。みたところこの2人は知り合い同士できたと言う関係ではなさそうだが、まぁ相席をしてもらおう。


「2人ですね、ではこちらの席へどうぞ」


お2人はあれ?と思いなにか言おうと口を開いたようですが、私がさっさと席へ案内してしまわればお二方も口をつぐんでしまわれて。ああまぁそれを狙いましたんですけどね。
お二人を席につけたあと、お茶を出すよう指示をし、私は注文の品を作るため奥へと行く。ああ確かみたらしと小倉でしたねぇ。

ちらりと二人をみたあと、私は団子作りに移った。



▽△



「「………。」」


ううん…気まずい。気まず過ぎるぞー!笠は取らないままでいるから互いに顔は見えないがなんか目の前の男からはこう…殺気とは違い、なんだろう…貫禄というか…威圧感みたいな…なんかそんなのがバシバシと感じる。なんでこんなやつと隣なんだ!怖いじゃないか!

少しビクビクしながらも別なことに意識を向けることにしてみた。

ああでもあんこって…あいつみたいだなぁ。よくみたらし派とあんこ派で喧嘩したっけ。最終的に団子がきたら終わる対決だったなぁ、今思えば凄くくだらない対決だ。しかもまた団子がおやつのとき同じ喧嘩をするんだから、懲りないよなぁ。

「…親父、やっぱ俺あんこで。」

「…親父、やっぱ俺みたらしで。」

「「…え?」」


隣のやつと目が合う。いや、実際は笠で顔も録に見えないわけだから目なんて合うはずがないんだが、そんな気がした。

どちらかが今のなしと変更を取り消した。俺だったかもしれないし彼かもしれないし両方だったのかもしれない。そんなことは、もうどうでもいい気がした。
目の前に置かれた団子を見て、隣の人を見て。そして同時に口を開いた。


「「…あの」」

「…どうぞ」

「…みたらし、一本食べます?」

「…あんこも、一本食べるか?」


2本セットになっている団子を、一本ずつ交換した。あんこを口に含んでみた。やっぱり、美味しいとは思えなかった。


「「…まじぃや」」


またも被った。どうやら気が会うらしい。2人して噴き出した後、少しだけ笑って話始めた


「いやあさ、兄が1人いてよ。そいつがもうみたらし大好きでなぁ…」

「へぇ、俺には妹がいてさ。あんこ大好きだったんだよ。やっぱ俺は好きじゃないが」

「俺もみたらしは好きじゃあねぇなぁ…」


ケラケラと笑いながら、双方団子を食う。どうやらお兄さんとは随分会っていないらしい。遠いところにいるんだとか。生きていると信じてるみたいだ。俺も見かけたら絶対教えてやるよと約束した。

最後の一本を食し、店を出た。


「じゃあ、お兄さん。見つかるといいな!」

「ああ。妹さんもな!見つけたら教えるからな!」

「おう!じゃあな!」


顔も名前も居場所も知らないのに約束をし、別れる。

あいつとは、また会える気がした。



立ち寄った場所での遭遇
(おやおや気づかず行ってしまったか)
(まぁそれも一興か)
(頑張れ、少年少女)


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