■ つまるところ、僕は『最上』なのさ。
はじめましてこんにちは、私は夜と申します。
このたびは、なんちゃって戦国時代ゲームの中に登場する某キャラクターに成り代わってしまい、たちまち絶望しました。
この人の居場所を奪ってしまった。
この人の人生を奪ってしまった。
私は異端なのに…!
何度も、何度もそう思った。鬱になりかけた。だけど、私は途中で気づいたのだ。
あれ?でもこれ最上だし、別によくね?
むしろ私がなった方が安全じゃね?
と。
我ながら完璧だと思う。そう思うと、今まで鬱だった心が晴れていった。たかが最上に対して私はなんでこんなに罪悪感を感じていたんだろう?凄く疑問だ。
気づいた日から、私は変わった。
なぜ私はあいつの喋り方をまねる必要がある
なぜ私はあいつの行動をまねる必要がある
なぜ私はあいつの美学を守る必要がある
私は、私なのだ。
姿形が問題じゃない、問題なのは
「魂さ!」
「……なにしてんだてめぇ」
「…政宗君、いつのまに?」
「門番、普通にいれてくれたぞ。ここの警備大丈夫か?」
「政宗君だからだよ。政宗君に成るのは、忍でも難しい」
「…そーかよ」
「…で、今日はなんの用事だい?」
「伯父んとこに暇だからって理由で来ちゃいけねぇのか?」
「…また執務をエスケープしてきたのかい?全く…小言を聞かされるのは私なんだよ?」
「逃げるが勝ちって教えてくれたのはてめぇだろ?」
「…はぁ、しょうがない。ずんだ餅を持ってくるから少し待っていなさい」
「Thaks!」
すたすたとその場を去れば、話を聞いていたのであろう女中がお茶を用意していた。
全く、できた子達だね。
早く持っていかないとうるさい甥っ子を思いながら、私は足を速めた。
つまるところ僕は、『最上』なのさ。
(政宗様ー!)
(げぇ!?もうきやがった!)
(そりゃあ毎回逃げ込む場所がここだったら早くもなるだろうよ)
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