次の授業の仕度中、急にドアが開かれる。後ろから二番目ということで出入り口に近い私は誰だろう?と思いドアに目を向けた。
そこにいたのは右目に眼帯をした、茶髪の男子だった。
「おいお前」
キョロキョロと教室を何度か見渡したその男子生徒は、今教室にいる中で一番出入り口に近い私に声をかけてきた。誰かに用事だろうか?そう思いながら「はい?」と返事を返してみた。
「三代…孫市、孫市いねぇか?」
「まごいち…?あぁ、雑賀さんか。」
「あぁ。いるか?」
「ちょっと待ってて、確かさっき…」
そこに、と言う前に雑賀さんが気づきこちらに近づいてきた。眼帯君は「よぉ!孫市!」と元気よく声をかけ、雑賀さんは呆れたように「何のようだ、伊達」と問い返していた。
…伊達?
「help。次小十郎の授業なんだが教科書忘れちまった…」
「はぁ…だからあれほど前の日に準備しとけと…」
「小言は後で聞く!早く貸してくれ!ばれる!!」
「……まぁいいだろう。確か数学だったな?」
「! Thank you孫市いいい!!」
感激の余りに雑賀さんに飛びつく伊達さん(仮)。うーん凄く気まずいぞ。私の近くでそんなことをしないでくれ。空気を保つのも疲れるんだ。
それから伊達さん(仮)は雑賀さんに教科書を借りて、教室から出て行くさい雑賀さんに「マジThankyou!愛してるぜー!」と叫んで終いには投げキッスをつけて帰っていった。
…なんか、とても強烈な人だったなぁ。
「ヘルプ。鬼教師の授業で忘れ物した」
(あ、佐助。さっき伊達さん(仮)に会ったよ)
(えぇ!?何もされなかった!?)
(雑賀さんに用事できただけだから大丈夫だよー)
(ほっ…よかった)