家に無理矢理連れてきた彼はずっと墓の後ろにいたわけだからいくら木の影といってもビッチャビチャだった。
ついでに少し抵抗を見せる彼を連れてきたせいで俺も結構ビチャビチャだ。
このままじゃ風邪を引く、ということでシャワーを浴びるように言ったら「しゃわあ?」と独特のイントネーションで聞き返されてしまった。

…男2人で一緒に入る、というのは…いささか…というか狭さ的にも抵抗があるので、風呂場に連れて行って実演することにした。
シャワーを出してみせるとオーバーリアクションじゃないかというくらい肩が飛び跳ねたけど、気にしないこととする。

一通り説明すれば簡単に理解してくれて、それじゃあタオル置いておくから温まりなよと言って湯船の火もつけてきた。
体とか洗い終わった辺りに入ると暖かい、はず。


「……で、まぁ…このびちゃびちゃな服をどうするか、だよなぁ…問題は」


このポンチョみたいなとズボンみたいなのは洗濯機にかけちゃって大丈夫そうだ…大丈夫、だよね?あ、なんか不安になってきた。
もう絞ってタオルで拭くだけにしちゃおう、そして一応かけておけばいいだろう。
彼も赤の他人に色々やられるのは嫌そうな性格だし、それが一番だ。

とりあえず、暖かくなれるもの…カップ麺でも作ろうと思う。



▽△



「…出た、けど…何その手ぬぐいの山」
「放置してたら錆びるかなーって思って拭こうとした結果とだけ言っておく」
「………そう」


少し何か言いたげだったが、彼が話さないなら別にこちらから探ることでもないだろう。それに、たぶん俺に対してのろくでもない評価だろうし。
彼が出るであろう時間をうまい具合計算して(本当はしてない、適当に感で作っただけ)作られてあるカップ麺を彼に差し出すと、なにこれとでも言いたげな視線をよこした。目は口ほどにものを言うって、きっとこうゆうことだ。


「カップ麺、ラーメンだよただの。もうできてるから食え。伸びる」
「らあめん?別にいいよ俺様、それよりあんた、」
「いや作っちゃった俺がよくないよ、食べちゃいなさい。体温まるから。そして俺は風呂入ってきちゃうから」
「え、ちょっと」
「毒なんて入ってねーよ、むしろ毒買うくらいなら飯を買う。んじゃ、入ってくるねーん」


ひらりと手を振ってその場を後にする。
赤の他人を家の中に放置って実際どういった事態よ、と思うだろうが俺だって風邪を引いて余計な金を使いたくない。
健康第一、とは言えない生活だがそれなりに俺だって体調には気を使ってるつもりだ。

シャワーもコンビニもカップ麺もラーメンも知らない、もう一体どこの時代の人間だという彼とは、風呂上りにいたら全てを決めることにした。





(同じなわけがない)
(同じな、わけがないんだ)