今日は生憎の雨だった。
と、いってもまぁ自転車が使えないだけで雨自体は嫌いじゃない。むしろ好きの部類に入るだろう。
最近はしなくなったけど、前はよく散歩に出歩いてたなぁなんて友達の話を聞き流しながら考える。

そうだ、今日はバイトも非番だから墓参りに行こう。


「…でな、そこで…っておい或人、聞いてんのかよ?」
「聞いてるって、可愛い子がいたってだろ?というかお前の話基本可愛い子の話しかねーじゃん」
「いやいや今回はマジ美人だったんだって!かなりレベル高いぜあれ!あと胸でかかったな!」
「お前どうせ美人なねーちゃんなら誰でもいいんだから、さっさと告白でもして彼女作ったら?」
「ちっちっち、わかってねーなぁ或人は。俺は今このフリーな状況でナンパして遊ぶのが好きなんだ!彼女なんて作ったら面倒くさいこの上ないだろ!」
「その興味ないナンパにつき合わされてる俺の気持ちになろうか」
「あれ、2人共まーたナンパの話?いい加減学習すればいいと思うよ?」


リクと会話していると、トイレに行っていた未央が帰ってくるなり呆れた表情で呟いた。
もっと言ってやってくれよ、毎回付き合わされる俺の身になってくれないんだこいつ。

そう未央に言えば、未央は「馬鹿(リク)だから仕方ないでしょ」といわれた。
あれ、未央くーん?今別な文字でリクって読まなかったかーい?と顔を引きつらせてリクが言えば、未央は満面な笑みで気のせいじゃないかな?という。うん、日常だ。


「…雨、止まないね」
「そうだなぁ、こんな日は捨て猫に傘をあげよう。きっと通りすがりの美人生徒が『あっ…リク君って本当は心が優しい子なんだ…』って俺のかっこよさを再認識してくれるはずだ!」
「寝てもいないのに寝言言えるなんて凄いねリク君!そのまま土に還ればいいんじゃないかな?」
「未央さん相変わらずの毒舌ですね、俺のハートがブロークンしちゃうぜ!」
「勝手に壊れてろよ」
「ぎゃふん!」


2人して酷い!これはいじめだわ!ママに訴えてやる!と嘘泣きをはじめるリクに、はいはい、ごめんなさーいね。と適当に謝って数個飴玉を頭の上に置いてやる。
未央からも凄い威圧感を感じたのでちゃんとあげておいた。そんなことせんでもいつもあげてるじゃないか…。

すっかり機嫌を直したリクを筆頭に3人で雨を見ながら飴を舐めてれば、リクが口を開く。


「…たぶんこれ今日ずっと外いたら、寒くて死にそうになるんだろうなぁ」
「え?なに?凍え死にたいって?もーなんで早く言ってくれないのさ!」
「え?俺一言もそんなこと言ってないですよ未央さん?耳大丈夫ですか?」
「リク如きに心配されるなんて一生の不覚だ」
「なにこいつ酷い」


また喚きだすリク達をどうどう、と兄のように2人を止める。
まぁこの2人は喧嘩するほど仲がいい関係なのだが、如何せんある程度でとめないと死ぬ気で戦争をはじめる。
放置しておけば放置しておくだけ俺にも自分の体にも被害が広がるのは周知のことだ。

ちなみにその2人の怪我を治すのもよく俺がやっていたりする。
だからといってそんな医療に長けているわけでもなく、青痣は適当に冷やして消毒ぶっかけて絆創膏or包帯を巻くくらいだ。
もっと優しくして!と必ずと言っていいほどリクに叫ばれるが自業自得なので問答無用で治療する。
保健室行くの面倒だとか言うからやってやってんだ、そこまで綺麗にできるか。女じゃあるまいし、というより器用じゃないんだから俺。


「なー、今日遊ばね?雨だと外出てる子少ないし、出てても皆暇してないしさー」
「パス、俺今日墓参り行ってくる」
「或人って雨の日ばっかり墓参り行くよね、なんで?」
「一々桶持ってきて洗うのが面倒だから雨使ってついでに洗ってる」
「「あー………」」


納得できたのか、微妙な表情で見てくる2人にまぁ頑張れと言葉を受け取った。手伝ってはくれないらしい。薄情な奴等だ。

昼休みを終えるチャイムが鳴り、席に座りだす皆々方。
窓の外を見てみるが、やはり雨は降っていた。





(日常、っていうか)
(雨降って何も用事なくて気が向いた時だけ行ってるんだけどね)