あのお泊り会からお菓子作りに目覚めた佐助君はよく勝手にリクや未央と約束して何かしら作って帰ってくるようになった。
俺にはお菓子を作る材料を買うような余裕はないし、バイトが忙しくてあまり家にもいれないから佐助君のいい暇つぶしになってくれてよかったと思う。
…正直俺のひとりぼっち感が拭えないが、まぁいいだろう。お菓子や料理をちゃんと持ってきてくれるし。それだけでお兄さんは幸せさ!(何キャラだこれ)


「どうした或人君?元気ないぞぉ!」
「いやぁ…元気がない、というか…微笑ましいんですよ。どちらかというと」
「?うらやましいじゃなくてか?」
「はい。微笑ましいんです。娘が友達と仲良くしてるお父さんの気持ち的な…」
「お前さんあいつらと同い年だかんなー戻ってこーい」


木下さんの言葉を右から左に受け流し、こちらをちらちら見てくる3人組に軽く手を振る。それだけでなぜか3人は盛り上がるらしく、けらけらと笑いあっていた。
うん…凄くほのぼのするな。佐助君もいい友達になれたようだし、お兄さん嬉しいよ本当…(だから何キャラだ自分)

少し和んだ後、すぐに仕事に戻る。俺だってバイト人間だ。終わるまではあまり深く関わらない。それが俺のモットーだ。


「或人、あんた今日早く終わるかい?」
「あ、いや……いや、はい。そうします。あの調子だと終わるまでいそうですし」
「じゃあこれ皆で食べな!少なくて悪ぃな!」
「むしろ申し訳ないっす水口さん…!」


数個ハンバーガーが入った袋を手渡され、早く上がるのにも関わらずここまでしてもらうと申し訳なくなってくる。
肝心の水口さんはいつもよく働いてるからいいってことよ!と凄い男前気質を発揮していた。ガハハと笑うその姿はまるで大工さんのようだ。


「じゃあ、すいませんがお先に失礼します」
「おうっまた明日なぁ!」
「気ぃつけて帰るんだよ!」


今日一緒の人達皆から声をかけてもらいつつ、俺は更衣室(というか休憩室?)に向かう。
ここに皆の荷物を入れるロッカーやらなにやらあるのだが、それは説明しなくてもいいだろう。

制服からすぐさま着替え、荷物を持って裏口から店を出た。


「よお或人!今日は佐助君の社会化見学に来てやったぜ!」
「じゃあ店に貢献するぐらいの物も頼んでほしかったな」
「そんなこと言わないの或人ー、今日も佐助さんとお菓子作ってきたから」
「今日のはぷりんだって、それと一緒に食べるでしょ?」


それ、とさしてきたのは俺がバックに入れて隠しておいたハンバーガーの紙袋だろう。
佐助君は戦国時代から来たせいなのかなんなのか、臭いに敏感だ。あと音とかも。昔の人は皆聴覚や嗅覚や視覚がよかったと聞くからきっとそれなのだろう。

がさりと音を立ててバックからハンバーガーを取り出せばリクと未央のよっしゃあ!という喜びの声。高校生にゃファーストフードが付き物だろう。


「俺んち家から近いし来るか?まぁ飯食うだけだけど」
「おっいいなー!男4人でお前んちとか狭くてしゃーなそうだけどまぁいいだろ!」
「リク、文句あんならお前は抜きだ」
「さーせん文句なんてリク君ないからいてれください」
「ねぇ未央君、なんでリク君って学ばないの?」
「馬鹿だからだよ」


もはや日常になっている会話をしながら、俺の家に向かった。





(そうだ)
(今度皆で、祭りに行こう)