「佐助君佐助君」
「なーに或人君?」
「料理好きなん?」
「んー…好きっていうか、仕事だった?みたいな?」


会話をしながら今だ彼が見つめる先にあるのは、テレビだ。
やっているのは料理番組。今も少し雑学を交えながら何か作っていた。

彼が俺のいない間何をしているか、なんて知ったこっちゃなかったけどどうやら彼はそこそこに料理に興味があるらしい。いや、仕事柄のせいかもしれないけど。
家で作る料理はいつも和食。時代を考えれば当たり前といえば当たり前なのだが、和食にファーストフードって凄い組み合わせだなぁなんて何度か思った。


「…あまり凝ったものは無理だけどオムライス程度なら、作れるんじゃね?」
「おむらいす?卵の中にご飯入ってるやつだったっけ?」
「そうそれ。せっかく時代が違うんだからこの時代の料理も作ってみたら?」
「食材とか」
「オムライス程度なら卵と米とケチャップさえあれば作れるよ。たぶん」
「絶対嘘だ」


酷いな。嘘じゃないというのに。まぁケチャップライスに関しては肉類を混ぜた方がおいしいのは確かだけど。
俺は料理がそんなできるわけじゃない。しかも殆どが独学と感だ。これがお菓子作りなら酷いことになっていただろうが、料理ならそんなもんでどうにかなる。
作れるのは玉子焼きや味噌汁、あとは一から作るわけじゃないがハンバーグを物によって焼いたり暖めたり、あとはレトルトカレーとか、餃子とか。
全部一から作るものじゃなく焼いたり暖めたりすればできるもの達だ。
こんな俺だからこそ、佐助君の登場が純粋に嬉しい。数少ない料理のレパートリーにプラスして味のまずさ。中の下な俺の料理の味から上の上になった佐助君の料理に毎日ご飯が楽しみで仕方ない常態だ。

そういえば未央もリクも料理が得意だったことを思い出した。
リクの料理上手の動機は料理ができる男はモテるとかだったような気がする。というかそれだ。未央は普通に趣味。料理だけじゃなくて2人共お菓子まで作れるんだから驚きだ。


「んー…じゃあ材料も手順も完全に揃ってるところに今度行こうか」
「そんなとこあんの?」
「この間会ったリクか未央の家」
「へぇ、料理できるんだあの2人?」
「お菓子も作れるぜ。以外だろ?」
「以外だわ」


あの2人ねぇ…どっちかというとあんたの方ができそうなのに。そう呟いた佐助君になぜか申し訳なくなった。俺の作った玉子焼きを見た顔と食べた後の微妙な顔は絶対に忘れない。

佐助君の様子を見る限り2人が嫌いなようには見えなかった、のでこれは決定事項とさせてもらうことにする。明日学校で話そう。佐助君の料理の腕は確かなものだと言えば和気藹々と受け入れて貰えるはずだ。俺は味見係り……は薄味派なのでできないけど、ええと…うん。食器の用意ぐらいならできるはずだ。頑張れ俺。むしろ料理上手な人達に囲まれて恵まれてると思うんだ俺。


「戦国時代、っつーと…この時代のレシピ覚えても生かせないかー」
「米と卵は高級品だからねー、ああでも砂糖はいっぱいあるようち。甘味好きなお人がいるから砂糖だけはあるんだよね」
「砂糖があるなら甘味作れないこともない、か…あでも小麦粉…まぁ粉ならなんでもいいのか?」
「いやいやいやあんた甘味作ったこと無いでしょ?」
「ホットケーキなら作れる」
「ほっとけえき?」
「よし、じゃあ今日のおやつはホットケーキにしよう」
「え、ちょっとほっとけえきって何よ?甘味?」
「見ればわかる。一緒に作るぞー!」


だからほっとけえきって何よ!という佐助君の叫びは総スルーして棚からホットケーキミックスを取り出す。これって小麦粉とどう違うんだろうか?同じ粉な気がするけどきっと違うんだろうなぁ。
佐助君に持ってきたボウルとホットケーキミックスと卵と牛乳と計量カップを渡す。え?なにこれどうするの?と目で訴えてきてる佐助君にホットケーキミックスをボウルに入れる用指示しながら自分は牛乳を計量カップにいれる。2人だと同時進行で楽だなーうん。

それからホットプレートを出してジュウジュウ焼いていけば佐助君もどうやらなんとなくホットケーキがなんなのかわかってきたようで、バターとメイプルシロップを用意してみたが俺も佐助君も何もつけないで食べる派だった。





(なにもつけないくらいで丁度いいねーこれ)
(そだなー)