「佐助君、買い物行こうぜ」
「冷蔵庫空っぽだし丁度いいねー」


でも学校とバイトは?と聞かれ、今日は学校休日でバイトは夕方からという馬を伝えた。
佐助君の言う通り、冷蔵庫空っぽなのも事実だし、あといい加減佐助君のパンツ調達にいかないと今日の分がない。すぐに乾く季節だけど限度がある。
リクや未央達に今月の金ないと嘘をついたのは少し申し訳なく思ったが、今まで1人でやりくりしていたのが2人分になったのだ。少しでも出費は少ない方がいいに決まってる。

なので、少し遠いけど歩きでスーパーに向かうことにした。




「…で、ここがスーパーでぇーす」
「へー…大きいんだねーやっぱり」
「もう見てた?それともTV?」
「てれび」


暇な時間多いもんなーと言いながら自動ドアを潜れば、少し驚いた様子だけどTVでいくらか知識を得ていた佐助君は酷く目立つ行動はしていなかった。
こっちとしてもそれは非常に助かるので、カゴを持ってまずはパンツコーナーに向かうことにした。

食材はタイムセール品狙うから、もう少し後だ。
一応今日の計画(主にタイムセールのだが)を佐助君にも話すが、彼はまずタイムセールがどんな状況になっているか知らない。
あれは酷い戦争だと言ったら笑われた。まぁ戦国時代から来た人に対して戦争だ、という表現は笑われるに決まっていたのだが。


今日は忙しい一日になるなぁと思いながら歩いた。



▽△



衣類・紳士物コーナーについた。
目的はパンツだけだが、ここで問題が一つ起こってしまった。


「あれ、或人じゃねーか!なんでこんなとこいんだよ!」
「本当だ。或人ってばバイト詰めるから暇ないんじゃなかったのー?」


なんでここにいるし、お前等。
これは計画外で予想外でできれば起こって欲しくなかったイベントすぎる。
佐助君はよくわかっていないようだが、彼等が俺の知り合いであってそれなりの仲だということはきっと理解してくれたはずだ。

ふぅ、と頭痛のする頭を抑えながら溜息を吐けば、彼等はやっと俺の隣にいた佐助君に気づいたようだった。


「…或人、お前…俺に黙って浮気かぁ!」
「は?」
「将来を近いあった仲なのに……なんでそんな男に現を抜かしているの或人!しかもイケメンじゃない!やっぱり世の中顔なの?ねぇ顔なの或人!!」
「…え、と…或人君、なにこれ?」
「たぶん昼ドラの見すぎ重症患者だ。処置するには手遅れだから放置しておいてやったほうが彼等も楽だ。行こう」
「ちょちょちょちょちょちょちょー!ふざけたのは謝るから放置せんといてぇ!」
「ちょ言いすぎだからリク。それと或人、俺を放置して行くなら或人がホモで家にイケメン連れ込んでるって噂学校中に流すけどいいよね?」
「サーセンっした説明させていただきます」


その前にパンツ買ってから、と付け足せば彼等は特に文句も言わずついてきた。
佐助君は凄くどうしていいかわからなそうに戸惑っていたが、珍しいので脳内に焼き付けておくことにする。
まぁ珍しいといってもまだ少ししか立ってないけどな佐助君と会ってから!

適当に安売りの3枚くらい入ってるトランクスを2、3個購入してとりあえず皆で軽く喋っていられる店へと入ることにした。
小腹も空いてきたところだし、丁度よかったといえば丁度よかった気がする。
…今の状況を良し悪しでわけるなら、確実に悪い方だったのだが。


「――で?幼い頃から病弱でとある事件をきっかけにずっと昏睡状態でつい最近意識が戻ったので常識を叩き込みなさい、と親族じゃんけんに負けたお前が託されたと?」
「おうよ」
「………いや、或人…それは……」
「ゲームみたいだろ?でもこれマジマジ大マジの話。俺もこんなイケメンな親戚いるとか聞いてなかったけどさー、まぁそれはそれこれはこれ、って感じ的な?」
「いやいやいやそんなドラマみたいな展開身近で起こるとかびっくりなんだけど?」
「そんなこと言っても…ねーぇ?」
「ねーぇ?」
「おーい、大の男2人がそんな首傾げて合図しても可愛くないぞー」


丁度ムックがあったのでそこでハンバーガーとジュースを頼み、少し有り得ないだろそれ?って思うような設定を無理矢理こじつけて説明してみたらやはりそりゃねぇよ…といった返答だった。
じゃあ戦国時代からタイムスリップしてきた人、と言った方がよかったのだろうか…いやそれこそ笑って吹き飛ばされて終了だと思う。

佐助君とはこんな状況になったら、という話をしてなかったので俺が特急で作った。
今度からこれで推し進めることになるが…まぁしょうがないだろう。ちゃんと予想して作っておけばよかった…。


「ふーん…まぁそれはともかく、俺リク!好きな人は美人女性!今度一緒にナンパ行きませんか!」
「初対面の人をナンパに誘うのはやめないリク?一緒にいるのが恥ずかしいから。あ、俺は未央ね。名前女の子みたいーって言って笑ったら容赦しないから。よろしく」
「あ、えっと、うん。よろしく」
「これ俺の友達だから別に名乗って大丈夫だぞーい」
「そう?俺様は猿飛佐助、或人君の家に住まわせてもらってまーす」


へらりと笑って佐助君が挨拶すれば、友好的だったのかなんなのかリクと未央がなぜかノリノリになった。
たぶん佐助君現代知識やネット知識、その他もろもろ覚えてたら完全なる親友カテゴリーに無理矢理入れられてたんじゃないだろうか。
…こいつらならやりかねないなぁ。

それからある程度線引きしつつも会話していればいつの間にか30分もたっていた。
これはやばい、と思って無理矢理話ぶった切って佐助君連れて買い物再会させるとなぜか2人共ついてくる始末。


「おいなんでついて来るんだ」
「俺等今日暇なんだよねー、だからタイムセールのお手伝いでもしようかと!俺超優しい!」
「タイムセールの手伝いはしないけど以下同文」
「こんの暇人共め…!」


ここから家に帰る時間を考えて、バイトの時間も考えるとギリギリといった感じだろう。
店内に響くアナウンスを頼りに、未央にカゴを持たせて佐助君に未央と待機を命じつつリクを引っ張っておばちゃんの山に飛び込んだ。
これを数回繰り返せば佐助君も理解したのかなんなのか、手伝ってくれたりした…というか佐助君早くね?
なんでそんな真剣な顔でサイズまで測って持ってくるの?
完璧すぎて俺泣いちゃいそうなんだけど!

今度オカンってよぼうかな、と思ったら佐助君に笑顔で睨まれたので絶対言わないと誓った。





(起こって欲しくないと願ってたけど)
(起こる可能性も踏まえて、それで外に出たんだ)
(起こると予想外は=でなんて繋がっていないということさ)