「なぁ、お前昨日携帯放置してたろ?」
「なぜにわかったし」
「連絡いれたのにでなかっただよばかやろー!」


学校に行ったらリクと未央に泣かれた。
どうやら昨日、墓参りが終わったら遊ぼうと手はずを売っていたのに俺がまさかの総スルー常態で家に押しかけるか悩んだらしい。
今度から絶対携帯放置しないようにしておこう。
佐助君のことバレたら俺のホモ説が立てられて学校中に広まる。それだけは勘弁だ、俺だって女の子が好きだし。

もともと薄かった友達付き合いというやつが更に薄くなることを感じつつも、なぜか佐助君を捨てるというのはどうしてもできなかった。
これは良心という名のエゴという奴だから気にしなくていい。


「なー或人っていつ暇よ?」
「しばらくは無理、金やばいし」
「何々?彼女にでも貢いだ?」
「なにぃ!?俺に黙って彼女だとおおお!?」
「いやそんなんじゃねーよ、普通にお菓子買いすぎただけだよ」
「あーそういや或人の好きそうなお菓子色々でてたよねー」
「そうそれ、買いすぎたんだよね。だからバイト詰める」
「どんまいすぎる!んじゃ今月は諦めるけどよー、今度絶対遊ぶぞ!」
「OKOKべりーOK、来月っつーと丁度夏休みだから宿題写させてくれ」
「だが断る」


自分でやりなよいい加減ーという言葉を貰いながらも、正直OKした手前佐助君も一緒に遊ぶという形に持っていかなければと思った。
いや、佐助君が嫌なら別にいいけどいいならこっちのことを知ってもらうべくも込めて一緒に遊んでくれればいいなー、みたいな。

それからチャイムが鳴るまでくだらない会話で盛り上がった。



▽△



「こんばんはー」
「あ、或人君。昨日は非番だったけど何してたんだい?」
「墓参り行ってきましたよーお陰で服びっしょりでしたけど」
「そうかそうか!いいことだ!あ、じゃあ今日は裏の方頼むわー!」
「ぅいーっす」


バイト先のおじさんに言われて、指定の制服とエプロンをつけて裏へと回る。
今日は俺以外にも何人かきてるらしい。まぁ夏休み近いし、旅行にでも皆行くのかもしれないな。

俺の働くここ、有名ファーストフード店ムック。
え?名前が明らかに偽者だって?いやまぁ、そこは大人の事情というやつさ。
ミスって残ってしまったハンバーガーやポテトがたまに貰えるからここに勤めているといっても過言ではない。高校生の胃袋はブラックホールなのだ。ファーストフードだって大好きだ。

でも、たぶん佐助君には油っぽすぎて胃に重いだろうなぁ、と考えつつも仕事に移った。



▽△



「ただいまー」
「おかえりー、ご飯作ってあるけどって…何?その変な臭いするの?」


バイトが終わり家に帰れば、エプロンをつけた佐助君が出迎えてくれた。予想通り似合うね、佐助君。
佐助君が不審がってるのは俺が今日貰った残り物。ハンバーガー2つとポテトSが一つだ。

佐助君も男子だし、佐助君のご飯とこれを一緒に食べても全然大丈夫だと思うんだよね。


「これバイト先のあまり、くれるんだよ」
「ふーん?」
「こっちのがハンバーガーで、これがポテト。一緒についでだから食おうぜ」


不思議がってるということは気になっているのだろう。
口に合うかどうかはわからないが、未来にきたんだから何事もチャレンジしてくれればいい。

…まぁ、なんでもといっても限りはあるけど。俺金いっぱいあるわけじゃねーし。


「佐助君風呂は?」
「もう先済ませた、家が予想以上に汚くてつい力入って汗かいたからねー」
「…サーセン」


食事をしながら軽く雑談を交える。
ただ飯を腹に入れるだけの行為なのに、それなりに楽しいと思えるのはきっと2人だからだろうな。未央やリクが来たときも楽しいし。

まずは味噌汁を一口。
………うわ、うますぎるんだけど。これ同じ味噌かよ。ありえねぇ、ありえねぇぜ…!
佐助君はやっぱり料理上手だった。





(…あれ、なんか凄く普通な感じするけど)
(まだ俺等、出会って二日目だよね?)