風呂から出れば、彼はとりあえずカップ麺を全部食べてくれたことを確認できた。
そして床に腰掛けているので椅子をさせば慣れないと返された。
まぁ俺も正直椅子に座ってるより床に座ってるほうが落ち着くわけだから何も言わないけど。


「あんたも湯浴みから上がったことだし…いくつか質問いい?」
「どーぞどーぞ、俺が知ってるのだったら答えるよ」
「じゃあ早速、あんた俺様が誰か知ってる?」
「いんや」
「なんで連れて来たの?」
「気分」
「あんた、何?」
「俺」
「…ここは、戦国の世?」
「いや、平成」


単語だけで答えを返せば、相手は幾分か納得していない表情を見せた。
特にあんた何?と聞かれたときに俺と返して後何も喋らなかったことだろう。
ちょっとしたジョークだったのだが、普通にスルーされてしまって何もいえなかった…。

彼の質問を逆に組み替えてみる。
彼は有名、もしくは彼を知っている人間は彼を何かに使うような輩が多く、俺を普通の一般人とは違う何かと疑わなくてはならなくて、戦国の世にいた人間らしい。
全くもって意味はさっぱりだが、とりあえず戦国の世にいたお偉いさんというところなんだろうか?


「戦国時代は4、500年前に終わってる。今の日本は反戦争主義の超平和国家」
「………うそだろー」
「本当なんだなぁ、これが」


頭を抱えて色々考え込む彼にけらけらと笑って告げればジト目で見られた。悪い。でもシリアスは嫌いなんだ。胃にくるから。
とりあえずまぁ、彼は戦国時代の人間だというのが決定付けられたのはよしとしよう。
ん?これいいのか?まぁ深く考えるのはやめよう。

つまり彼は戦国時代から平和な未来にタイムスリップしてきたわけで、急に飛んできたわけだから住処なんてないわけで、文明の進化の賜物も知っているわけがないわけで、彼はこの世界で1人なわけで、つまり、それは、えっと、


「………ねぇ、少年」
「…なーに、少年」
「同情と責任感ゆえの発言だけど、ここで雨宿りしてくかい?」
「そうだねぇ…そうするしか、ないかな?」
「…そっかぁ、なら服とか…いや服は俺と同じで平気そうかな。そこまで大きな違いないし。パンツだけ準備するか」
「よっくわかんないけど、なんか手伝うことある?」
「うーん…家事手伝ってくれると嬉しいかなー」
「了解ー」


決まったら決まったで、意外とのほほんと先のことを決められるもんだ。
バイトにばかり時間をついやしてるから掃除とか全然やってねーんだよねー、笑っちゃいけないけど。

彼、なんか器用そうだけどその通り器用だったらいいなぁ。俺不器用だし。
料理とかそんなに上手くないんだよね。勿論美味くも無い。普通って感じ…いや、普通より少しまずいだろうか。
あぁ、でもこれで彼が天才的に料理がうまかったら…俺は1人暮らしできないだろうなぁ。

小さくそんなことを考えて、やがては消えていった。





(でも、そんな異端を受け入れようと思う俺は)
(この異端と同じく、異端なんだろうか?)