家は特に誰かの家の隣、とかじゃなくて普通に普通だった。いや、それこそが問題なのだけれど。豪邸とは言わないけど、それでも一人暮らしに普通の一軒家は広すぎると思う。風呂とトイレは別個だし、リビングと客間と自分の部屋わけてもまだ空いてる部屋がある。元々は家族三人で住んでいたらしいし、普通なんだろうけれど…一人の私にはあまりにも広すぎる。

「…片付けできる気がしない…」

せめて汚すのはひとつの部屋だけにしよう。そう思いながら、見知らぬ家への一歩を踏み出した。





新しくて綺麗で、まだ硬い制服をハンガーにかけながら、これからどうするべきか悩むことにする。一応置いてあったパソコンでいろいろ調べてみるつもりだけれど、きっと望む結果は出てこないだろう。帰れる手立てもない。ならば慣れるしかない。3日もすれば慣れるだろうし、受け入れられるだろうからそこは問題じゃなかった。問題は、文字通りこれからどうするかというところである。

「終わり方知ってるしなぁ…途中のいざこざも、全部知ってるし…」

大人的な、現実的な意見を申すのならば、関わりたくはない。並行世界の未来で死んでいるのも嫌だし、マフィアになるのだって嫌だ。キャラクターには、どちらかと言えば関わりたい。けれど将来を考えるとどうしても尻込みしてしまう。私は殺し屋でもなければ、海外育ちでもない。ハワイで親父に習ったことだってない。ステータス的にこの世界に見合う程度の補正はついているかもしれないけれど、それでも底辺だろう。大人になった今運動なんて一切していなかったし、学生時代自体ほとんど引きこもりだった私に高い運動能力スペックなんて持ち合わせていなかったのだ。その時点でもう詰んでいる。修行なんて絶対にしたくない。私は気楽に過ごせればそれでいいのだ。じゃあ情報部員は、と言っても無駄だ。そっちだって逃げたりなんだりするだろ、というのは置いておいても、まず私は情報を人伝に調べられるほど友好的ではない。じゃあ得意のパソコンでハッカーにでも、ってそんな簡単にハッカーになれるのなら生きてる人間みんなハッカーだ。しまった本気で詰んだぞ。
あくまでも関わる前提で話しているだけで、関わらないのなら全くもって関係ない。なんの特殊能力だっていりはしない。過去となった前世の経験を活かし、せめてあの頃よりは良い方に進んでいくことに力を入れるだけだ。まずは学校ちゃんと通うところから!(最低ラインすぎる)

「そうと決まったら、まずは夕飯作りますか」

ひとりきりのお祝いだ。昔は大体こういうイベントがあったあとは、家族で外食だったんだけれどなぁ。一人で外食してもいいけど、今日じゃなくてもいいだろう。今日はもう家を出たくない。幸い、冷蔵庫にはそこそこ入ってたから問題ない。炊飯器にご飯も残ってる。ちょっとお祝い気分上げるために、オムライスでも作ろうか。他は、まあ、あれだ。そうなったら、考えるってことでひとつ。


 /