ふう、と吹きかければぷわりと空を飛ぶシャボン。光を反射してキラキラと虹色に輝くのに、透明だと言われるのだから不思議なそれは、少しでも何かに触れてしまえばたちまちパチンと割れてしまう。触れなくても、数秒も浮いていれば、パチン。割れてしまう。
それを見つめながらまた、量産されるシャボンを、人は綺麗だというのだろう。うつくしくて、はかなくて、一時の夢を反映させるあわぶくを。

人は、綺麗だと、いうのだろう。

「…マッチよりも、夢は見せてくれないけどさ」

ふう、と緑色の定番なスティックに息を吹き込む。ぽぽぽぽぽ、と大量に生産されてはパチンパチンと割れていくシャボンを見つめながら、また妄想に思いふける。
このシャボンにニトロは入っていないから爆発しないけれど、このシャボンにガソリンは入っていないから引火だってしないけど、それでもふと思うのだ。綺麗なものが、平和なものが、兵器に変わり得る瞬間を。

そんなくだらない妄想を、もう何年も、それこそこんな世界に居着くよりも、ずっと昔から。描き続けてる。



「あー、はやく帰りたい」

妄想が現実になってしまいそうな未来なんて、いらないとばかりに、空に飛ばした。



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