結局彼は、あのあと青春の一ページで、未来への分岐点である屋上ダイヴをした。 もちろん私はそれを見に行くことはなかった。人ごみに紛れてついては行ったけれど、屋上へと続く扉に手をかけることは、しなかった。大衆の喧騒を聞きながら、ただただ自体を理解した。ああ、彼は、飛んだのか。ただそれだけを現実として捉え、その場をあとにしはじめる生徒たちを黙って見送る。
いくら漫画の世界だからといって、本当にこの反応をされると、クるものがある。
がやがやと笑いながら去っていく生徒の背中を見ながら、一度だけ屋上を見た。壊れたフェンス以外は常日ごろとなんら変わりのない、普通の屋上。さっきまで大勢の人がいたなんて思わせないほどに、静寂な場所。さっきまで、ひとが一人、死のうとしていたことなんて感じさせない。学校の屋上。
「…ばかみたい」
錆びて壊れたフェンスと、ふたつの意味での笑い声。 きっと私は、それを忘れられることなどないのだろうと思いながら、その場をあとにした。
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