笑った顔。暗さの感じない、いつもどおりの、わらった顔。へらりと締まりのない顔をしながら、ゆったりと手をあげる。
「よっ、雨宮」 「おはよう、山本君」
いつも通りに挨拶を返せば、一瞬だけぱちくりとまばたきをする。すぐにいつもの笑顔に戻って、また元気よく「おう、おはよ!」っていうのだ。くそ、かわいいな。けれどもそんな二回も挨拶しないで頂きたいという本音。少し慣れてきたとはいえ、じっと見つめられるのはとても痛い。視線が痛い。ああ、中学生こわい。
いや、元々中学生はこわいものか。 だって、簡単に自殺なんてしちゃうんだもの。こわい、こわい。
「よう、山本!昨日のどうやったんだ?」 「ワイヤとか使ったんだろ!すっかり騙されちまったぜ!」 「ハハッ!馬鹿がふさぎこむとろくなもんじゃねーだろ、楽しかったぜ!」 「沢田まで共犯とか、いつのまに仲良くなりやがったんだ〜?沢田の説得とか本当かと思ったじゃん!」
げらげらと笑いあう彼らの笑顔の意味合いは、全然違うんだろうなあ。
なんて思いながらも、私には関係ないことなので。そろそろチャイムが鳴りそうなのを時計を見て確認しながら、私はホームルームの準備をするのだった。
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