「なん、」

目の前に広がる光景に、思わず目を見開いた。ついて出た声は寸でで飲み込んだ。嘘だ、嘘だと鳴り響く警報が思考の邪魔をする。だって、自分は、普通に暮らしていたはずだ。いたって普通に。テンプレとしか言いようがないけれど、しょうがない。本当に思考が回らないのだ。震える手を視界にいれて、もう一度、嘘だと警報が響いた。受け入れたくないと、世界が叫んだ。けれど誰も、気にもとめなくて。

「………なん、で…」

小さくこぼれ落ちた言葉は、涙と共に周りの音に埋もれて、消えてしまった。


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