思考回路はレッツファンタジー。ちょっと自分でもないなと思った。浮かれてる。私は、浮かれている。傍観しようとしてたのに、会おうとなんかしちゃって。いや、会えないってわかってたから行ったんだけどね。

あー、銀色。にやける。

「…なぁ、雨宮」

ぱちん。空想に浸っていたのを現実へと引き戻す、夢の彼。名前。呼ばれるはずのない私の名前を、夢の彼が呼んでいる。夢じゃないのだから、そら呼ぶだろう。なんてそんな現実的な回答は、いらなかった。

「なに?」
「雨宮も、あんな感じのがタイプ?」
「えー、」

突然なんつーことを。って思ったけど、女の子がきゃあきゃあ騒いでたら気になるのか。私じゃなくて、私の隣の子に聞いてやれよそういう質問。あ、その子も別な子ときゃあきゃあ言ってるね。あれ山本本命じゃなかったっけ?ん?まぁ、中学生なんてそんなもんでして。

「…んー、友達にはほしくないかなぁ」
「へぇ」
「意外そうだね」
「意外だし」

そう、友達とか、カテゴリ分けしてそうになかったから。続けられた言葉に、ああと思う。なるほどそういう意外か。いや、私だって女性だ。カテゴリ分けなんて余裕のよっちゃんだ。って、そうじゃなくて。

「たぶんね、ああいう子って」

ガンと音がして、悲鳴が聞こえた。そして、小さな、舌打ちも。
それを横目で一瞥だけして、少しの嘲笑を混ぜながら、言葉を続けた。



「―――古典的な、ツンデレちゃんだから」



だから、めんどくさいんで、紙面ならまだしも関わり合いにはあまりなりたくないなあ。とは言わないけれど。
近い未来、そのことをよく知ることになるであろう彼に『知識』を教えながら、私は笑った。



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