「…おい毛利、なんか…機嫌悪いのか?腹でも痛ぇのか?」

「貴様の溜め込んだ政務の尻拭いなど機嫌が良いはずがあるまい」

「…すまねぇ……」


未だによくわからねぇんだ…。と小さくぼやく長曾我部に溜息が漏れる。何年かかれば貴様は1人で政務ができるようになるのだ。我がいなくなったら、一体どうするつもりなのだ…。


「貴様の頭でも理解できるように説明したはずなのだがな…我の予想を上回る馬鹿さだったか…」

「ち、ちげぇよ!わかっちゃァいるんだが、なんつーかその…毎回わからないところが出てくるっつーか…」

「…つまりそれはわかっておらぬのではないか。認めよ、自分ができないということを。その結果我がこうしてずっと筆を巡らせていることを。」

「………………すいません」

「謝る暇があるのならばできるとこを早にやれ」

「はい……………」


申し訳なさでいっぱいになっている長曾我部を横目でちらりと見る。頭をひねりながらも、一生懸命筆を動かしている姿は健気で、そして驚くほどに真っ直ぐだ。
真っ直ぐ。どこぞの若虎もそうだが、真っ直ぐすぎるヒトというものは些か面倒ではある。普段は空気など読めもしないのに、本当にヒトがアレなときには何故か本能的なあれで察知してしまう。ああ、なんとも厄介だ。
理解していないのに、確信があるわけでもないのに。思ったから考えずに言葉に出す、というのは如何に低脳か。けれど、ないものねだりで羨ましいと思うのもまた事実であった。


「…あ、ちが、こっちがこうだから…そっちが…つまり…………?」

「…こうにも、馬鹿であるのにな」

「藪から棒に何言いやがるんだ!?」

「政務もまともにできぬ輩など、馬鹿以外に形容する言葉はない」

「うっ……でもその言い分は酷ぇ…!」


本当のことしか、言っていないであろう。



真っ直ぐ、故に綺麗なことよ
(曲者も、きっちりと曲がっていればまた綺麗なり)

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