「元就様!」
「なんぞ、その様に慌ておって。煩わしい。」
「す、すいません…」
「謝罪はよい。早々に要件を申せ」
「は、はっ!実は、豊臣…凶王軍がこちらに向かっていると情報が、」
「…なに?」
眉間に皺が寄るのがわかるが、構っていられる暇はない。 先刻、豊臣が殺られたということを聞きはしたが…些か行動が早くはないか?
「数は」
「少数のようです。戦を仕掛けてくる様子はないようですが…」
「凶王は」
「申し訳ありません、まだそこまでは…」
「……ふむ。もうよい、下がれ。事がわかり次第報告せよ」
「は。」
来たときとは違い、落ち着いた様子で下がる兵から視線を外し先程まで読んでいた本を閉じる。
こうなることは予想していた。だが生憎出方まではわからなかった故に、干渉もせず自国の防衛と他国の状態の警戒を高めようとしていた、その矢先に起こるとは。 この流れで、この時期に、少数で来るということは、そういうことなのだろう。これから起こりうることには、正直関わりたくはないが致し方ない。きっと断ればあちらは力でねじ伏せてくるであろう。つまり戦になる。それは、頂けない。
「…良いだろう。我は我成りに、貴様らを有効に活用してやろう。」
平和殺しの罪は重いと、身をもって知るがいい。
舞い戻りまして血濡れた戦場 (あれの居場所は、そこではないのだ)
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