「…ッ?!」
「ッ…ハッ、でも、一番赦せねぇのは…ばか、な、俺だよ…!」
痛い痛い痛い。体が、熱い。切られたところが、あつ、い。 あいつらも、みんな、この熱さを体感したんだろう。俺も、たぶん、あいつらよりは少ないけれど何度か体感した。すごく痛くて、熱くて、苦しいんだ。
ぐらり、と体を支えられなくなった碇ごと倒れる。いたい。 毛利の体が跳ねるのまで見えたけど、手を伸ばしてはくれなかった。
「ッなぜ…!」
「な、ぜ…って…へんなこと、きくなぁもうりは……だって、よ、」
兄貴が妹殺していいわけなんて、ねぇだろ?
「ッ…!貴様、覚えて…?!」
いつも鉄仮面を貼り付けてるみたいな毛利から無表情が剥がれ落ちて、驚愕に染まるのに思わず笑いたくなった。痛いから笑えねえけど、でもたぶん口角ぐらいはあいてんじゃねぇかなぁ。
覚えてって、そりゃ、俺の唯一誇れるのは記憶力だったからな。 忘れたことは、一度だって、ありゃしねぇんだ。
音にできない思いが溢れ出すけれど、口に広がる鉄の味のせいでもう言葉をほとんど紡げないのがわかる。あんまり、痛いなんて感じたことねぇけど、そっか。こりゃ、ほんと、いたい、な…。
「………なら……………」
続きは、きっと紡がれない。 ここに来て、俺が俺に成って、お前がそいつに成ったときから、俺がそう縛り付けちまったから。俺が、頼りないから。お前に必要な言葉さえも語らせられないように、してしまったんだろう。 知ってる。知ってるんだ。ずっと見てた。ずっと一緒にいた。でも、もう、これ以上いられないのか。結局、最後まで縛り付けてしまうのか。俺は。なさけ、ねぇなぁ。
言いたいことはたくさんあるけど、現実はそんなに優しくないわけで。 えと、じゃあ、うん、そう、だな。ちょっとが、限界だわ。眠いし、これで、いいよなぁ。
「じゃ、あ…おやすみ、毛利」
「ッ…………!!」
安心して、お眠りなさい。
忘れていたのは君だった (刃を取れ。さすれば忽ち、殺人者だ。)
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