知って、しまった。 彼は、真実を知ってしまった。
「…備えよ」
「は、?」
「皆に伝えよ、これより敵襲が来る。早急に戦に備えよ!」
「は、はっ!」
ドタバタと慌てて駆けていく捨て駒の後姿を目に留め、息を吐く。 なにを、気にすることがあるか。あの日あの時あの瞬間に真実をあやつに伝えなかったときから、こうなることは理解していたはず。可能性を捨て置いたのは我ぞ。
今考えるべきは、戦への勝利のみ。
「我の手から零れ落ちるものなど…はじめから、必要ない。」
勝手に勘違いして、勝手に暴れて、勝手に嘆いて、勝手に落ちていった。
貴様が悪いのよ、長曾我部。
嗚呼、我が手に栄光あり! (貴様の為に、死ぬ我ではない。)
← / →
|