「毛利様、行かないのですか?」

「なぜ行かねばならぬ、会議の日程はまだ先ぞ」

「いえ…出過ぎたことを言って申し訳ありませぬ」

「下がれ。我は忙しい。」

「はっ」


駒を下がらせ、筆をすすめる。忙しいのは嘘ではない。情勢に気を配らせ、相手の出方を見、そして自国の安全を作る。何故会談の日程もまだ先なのに、今から向かわねばならぬのか。理解ができぬ。

…まぁ、きっとそれは建前で、ただあの真っ直ぐと前しか見えておらぬ者共の中へと入りたくないだけなのだろうが。


「…我ならば、また、違ったのだろうか…?」


何に対しても必死な己等、見ずに済んだだろうか。我ならば。
…くだらない。我ならば、等。戯言に過ぎぬ。我は我。それ以外に、我等いないのだから。
我に成りたいのならば、まずは関係から見直せ。我なのであれば、我を振舞うな。


「…中途半端、なのが、我よ」


捨て置けなくて手を延ばし、そして拾いきれぬ故に溢れ落とすのだ。



理解と暗示は違うのよ
(これは理解だ。そう思うのが、暗示なのだ。それに気づいて尚行うお前は、愚かなのだ。)

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