「長曾我部殿は、何故西軍に入ったのでござりまするか?」
「…まぁ、いろいろ、な。そういうアンタは?」
「…某は未だ未熟故に、でござる」
「へぇ…」
「言っておくが長曾我部、貴様よりこいつの方が政務はできるぞ」
「えっ!?嘘だろ!?」
「勉学もできずにお館様の後を継ぐことはできませぬ!」
「…………え、もしかして一番未熟って…」
「貴様だ」
「そんなはっきり言わなくてもいいだろ石田ァ!」
「ヒッヒッヒッヒィッ!」
悲痛な叫び声と愉快な笑い声が合わさって、まるで、日ノ本を二つに分けて戦している最中じゃなく思えるほどにこの空気は平穏だった。 城を開ける、ということは危ないことなんだけど、そこを付け狙うことはもうないだろうからいいらしい。まぁ、一度話し合わなきゃいけなかったらしいしいいんじゃないの?
それにしても、西海の鬼こと長曾我部元親…明るくアニキ肌で、真っ直ぐな男だとは俺様も聞いていたけれど、それだけじゃぁないらしい。 明るくて、真っ直ぐで、取っ付き易くて、子供みたいで、だからこそ少しだけ心配になって、まぁ、つまりは自然と人が集まるような人だったってわけ。同盟と言っても、疑うものは疑わなきゃいけないから動向を見張ってはいたけど…まぁ見張るまでもない男だということだったわけだ。嘘はつけない。ついてもすぐバレる。すっごいお人好しで、それ故に仲間に何かあったときの対応は、普段とは似ても似つかないくらいに冷たい。
「…でも、それもまた、真っ直ぐなんだよねぇ…」
「さ、猿飛ぃ!ちょ、ちょっと助け」
「長曾我部殿もお館様のような偉大なるお方を見つけ教えを乞えばよろしいとございまする!」
「貴様は一国の主という自覚を持て!秀吉様は政務をこなし、その上で戦に出向いていたのだぞ!!」
「あー聞こえない聞こえないぃぃぃ!」
「…あの真田の大将が人に教えられるようになってるだなんて…!俺様感激…!」
「お、お母さんになってる…!感激してないで助けてく」
「長曾我部ェ!」
「長曾我部殿ォ!」
「もう勘弁!」
「ヒーッヒッヒッヒッヒ!」
それにしても、じゃあなんでこの鬼はあんな冷酷な人と一緒にいるのかね?
忘れた頃の夢を見る (こうやって笑いあっていられたら?一番、似合わない言葉だけどね。俺にも、アンタにも。)
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