「石田三成ってーのは…アンタかい?」

「…確かにそれは私だが…誰だ貴様は」

「俺ァ長曾我部元親、西海の鬼たァ俺のことよ!」

「長曾我部…知らん。聞き覚えがない。」

「そらァ俺とアンタは初対面だからじゃねぇか…?」

「それもそうか…」

「………………………………」


何か言いたげな目でこっちを見てるっぽい、包帯ぐるぐる巻きの人を視界に収めつつも石田三成から視線は外さない。俺が今日用事があるのは、西軍総大将であるこいつだからな。


「…で、何用だ。単身で乗り込んで来るとは…残滅されたいのか」

「…文出さなかったか?俺」

「…刑部、そうなのか」

「………先刻ちゃんとワレは伝えたぞ、三成…」

「…覚えていない」

「主は軍に関することくらい覚えやれ…。それで、長曾我部とやら…主は何しに来よった?無用ならば…どうなるか、わかっておるよナァ」

「あー…」


なんだろう、この怒った毛利を相手にしてるときの感じ…確実にこれなんでもないわ!って言ったら毛利の場合焦がされるんだよな…、いや、用事がなかったわけじゃないからそんなことは起こらない…とは思うけどよ。

石田三成ってのがあの豊臣秀吉の忘れ形見だってことは知ってる。けど、その豊臣秀吉がぶっちゃけいい噂をあまり聞かなかった…いや、日ノ本の為を思ってるのはわかってたんだけどよ…織田並にいい噂は聞かなかったな…懐かしい。
まぁ、だからこそ、家康が謀反を起こしたんだろうが…その家康も、変わっちまった。なんだ?天下ってのは人を極悪人に変える呪いでもあんのか…?…って今はそんなことはどうでもいいんだった…。

つまり、あの豊臣秀吉の忘れ形見がぶっちゃけいいやつとは思えなかったんで直接見に来たってわけなんだが。


「…うん。こんなこと言ったら焦がされるどころじゃねぇな…」

「焦がされる…?」

「気にすんな。なぁ、石田さんよォ…俺を西軍に入れちゃァくれねぇかい?」

「…は?」

「…家康は、あいつは、変わっちまっただろ?俺もいろいろあったからよ…でも俺はアンタのことを知らなかったわけだ。だから、今こうして見に来たんだよ。…アンタなら、ついていってもいいと思ったわけだ」

「そんなことで貴様は単身で乗り込んできたのか…?」

「俺が行けば確実だろ?」

「貴様ッ…一国の主がそんな軽率な行動をして良いと思っているのか!」

「えっ」

「そこに座れ!そんな心構えで西軍に入れると思うな!!」

「ええ!?」

「ヒヒッ…何気三成は厳しいぞ。覚悟しやれ。」

「ええぇええ!!?」


まさか同盟に来たのに説教喰らうとは思いませんでした。



真を知らずに嘘に縋る
(いきはよいよい、かえりはこわい)

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