朝学校に行けば、下駄箱がごみ箱になっていた。特にそのことに関して何か思ったわけじゃない。むしろああまたかくらいの認識だった。まぁ僕はこうなることを知った上で靴を持ち帰り置き勉もしてなかったので被害は殆どない。履いてきた靴だって上履き入れてきた袋に入れておけばいい話だし、よし。なんの問題もないな。

それから教室に行ってみれば案の定また赤の他人に睨まれる。一体なんなんだ。本当。
1人の人間がまた僕に近づいてきて胸倉を掴み上げた


「Ha!どうだったよ、やられ返される気分は?」

「何を言っているのか理解不能だね、まず僕はなにもしていないのにやり返されているという点が全くもって理解できない。」

「てめぇまたんなこと言って…!」

「というか昨日も言ったと思うけれどなぜ僕が犯人だと断定されているんだい?昨日の今日で僕が仕掛けるメリットは?僕がやったという物質的証拠は?なにもないのに犯人扱いされてたまったもんじゃないよ。」

「それは…」

「どうせてめぇが第三者を犯人に仕立て上げるために言葉を紡いでるだけだろ?つまり犯人はてめぇだ、you see?」


なんて単純な思い込み推理だ。馬鹿げている。なぜ他の可能性を考えないのか。これで犯人が本当に僕じゃないとしたらどうする気なのだろうか。高校生にもなってそんな誤った推理を繰り広げて恥ずかしくないのだろうか。なぜ誰も他の可能性について信じないのか。なぜ目の前の男や泣いている女の肩ばかりもつのだろうか。一つの存在ばかりを盲目的に信じ他者を見ないなんて馬鹿にも程が有る。まぁこんなことを言っている僕も人のことはとやかく言えないほど彼女が大好きなのだが。でも僕は盲目的に好いているだけであって他者の声を聞かないわけじゃない。聞いたところでそれを実行するかしないかは別なのだが。だからといって彼女の行う行為は全て善だなんてことは言わない。第一善悪で分けたりしない。それが一般的にいけないことがどうかという話なだけだ。だから彼女らが前世で僕に行った行為はあからさまに『いけないこと』でありその『いけないこと』の果て1人の人間の命が散った。

目の前にいる彼等はそれを知ってはいるだろうが、実際に身近でそうゆうことが起こったことがないのかもしれない。ならば僕が今君達の目の前で窓から身を投げ出し死んでしまえば取り返しの付かないことをしてしまったと後悔するであろうか?

否、するはずがないな。

命の重さも、罪の重さも、自分が仕出かしてしまった犯罪にも。彼等が気づくことは無い。
仮に気づいたとして、さして特に感情なんてうまれないだろう。たった1人の人間、自分達は遊びでやっていたことがその1人の人生を奪うだなんてことこの世にざらにあるのだ。

まぁこんなことを言っておきながら言うのもなんだが、
僕も何も知らないのだけれど。


小さく自分を嘲笑えば、馬鹿にされたと思ったのか目の前の男は僕を押しのける。
まぁ、転びはしなかったのだが。


「なにがおかしい」

「全てが」

「…ばかにしてんのか!」

「そう聞こえたなら謝ろうか、ごめんよ。」

「…チッ」


舌打を残して席に戻る。僕も、席に戻った。



僕の眼には、何が映っているのだろう?
(盲目的に信じる君達への呆れ?)
(ばかげた遊びにのっている自分への嘲笑い?)
(まぁなんにせよ、彼女からもたらされる不幸じゃないならいらないや)


僕の眼には、何が映っているのだろう?