次の日、学校に行き教室に入ったとたん空気が凍った。
ああ、なんだろう、久々だなぁ、この感覚。とか思っていると、1人の男子生徒が僕に話しかけてきた。


「おいてめぇ、よくのこのこと来れたな」

「なにが?」

「知らねぇとでも思ってんのか?
 てめぇがあいつに告ってフラれたからって襲いにかかったっつー話はもう全員知ってんだよ!!」


なんの話だろう。告白された覚えはあるけど、告白した覚えは無いなぁ。ああ、そういえば前世でこうゆう話があったような気がする、なんだったっけ?何で見たんだっけか?


「まさか知られてるとは思わなかったかぁ…?Ha!途中で逃がしたのがまずかったな!」


男が何かをしゃべってるけど全く気にならない。というか本当なんだったっけ、そして彼は一体なんという名前だったっけ。ああもう、関わらない人間は覚えられないんだよなぁ…昔からこの体質は変わらないのか。

僕が話しを聞いてないのに気づいたのかそうでないのかしらないが、男は思いっきり舌打ちをして僕の胸倉を掴み上げる。そこでやっと男の存在を思い出した


「無視たぁいい度胸してるじゃねぇか…」

「いや、ごめんよ。考え事をしてたんだ。なにしろ身に覚えがなくてね。」

「てめぇ…しらばっくれる気か!」

「いやいや本当に身に覚えがないんだよ、告白された覚えはあるけど告白した覚えがない。第一あの人は僕が好きな彼女とは違うしね。」


女の子に囲まれて、覚えた表情を見せる女をちらりと見る。うん、昨日僕に告白してきた子だ。顔可愛いけどこんなこと仕組んだ心は可愛くない。あ、そんなこと言ったら彼女も心可愛くないってことにならないだろうか?いいや、彼女は欲望を僕にぶつけまくっていた。隠しもせず僕にぶちまけていた。小賢しい手なんか使わなかった。ああやっぱり彼女はとても可愛かったんだ。どうしよう、会いたくなってきたぞ。まぁ会えないんだけど、妄想と想像と思い出で乗り切ろうと思う。


「ひどい…好きな人がいるのに、私に告白してきたの…?」


女が小さく呟く。おいおいどうしてこうなった。シンとしてる教室にゃ小さい声でも結構聞こえるんだぞ。ちなみに僕は彼女一筋だ、勘違いしないでくれ。君と彼女は何一つ似てない。第一彼女の代わりなんか見つける気なんてない、彼女は彼女だから好きなんだ。君は僕が僕だから好きなんだろう?いや、それとも顔とかそうゆうの目当てかな?いやぁーいい男はつらいねぇ。前世と違ってイケメンに生まれてきた自分が悲しい。

ああ、そういや彼女の呟きでクラス中の視線が酷くなったな。
とか
ああ、そういや彼女の呟きで胸倉掴んでる手の力が強くなったな。
とか
ああ、そういや彼女の呟きは完璧だけど、密かに笑ってる口元で台無しだ。
とか

あれとかそれとかこれとかとかとかとかとかとかとかとか、


いやぁ、懐かしいなぁ…。
まるであの頃に戻ったみたいだ。
ああでも、彼女がいないんじゃ話にならないや。
誰か彼女を連れてきてくれないだろうか。
彼女がいれば僕は喜んでこの位置に収まるよ。
ああ勘違いしないでくれ、決してMじゃないんだ。

ただ彼女の為になるなら、それでもいいというわけさ。


キーンコーンカーンコーン

僕の思考を邪魔するようにチャイムが鳴る
目の前の男は、また舌打ちをして僕を乱暴に放し、席についた。

僕も、何食わぬ顔で席につくことにした



君に縛られた僕は
(つまらないつまらないつまらない)
(彼女がいないこの位置は、こんなくだらなくつまらないものだったのか)
(そしてあの男、結局誰だっけ)
(あの女にも覚えがないや)
(あとこんな話どこで見たんだっけか)
(ああ、彼女に会いたい。)


君に縛られた僕は