墜ちる堕ちる落ちる。人が死ぬとき時間が遅く感じるというのは本当だったらしい。前世(まえ)は『彼女』しか見ていなかったからわからなかった。
落ちる僕を廊下を歩いている人達が驚いた表情で見る。そのうちの何人かと、目があっていった。
ああ。長髪君、目落っこちそうだね。絆君、きみは人が死ぬというのに最期まで笑顔なんだね。銀髪君、きみも僕如きが死ぬことに対して驚きを見せるんだね。バンダナ君、そんな驚かなくてもいいんじゃないかな?鉢巻君、なんでそんな青ざめているんだい?
そして、最後に目があったのが――
「…え?」
なんでなんでなんでどうしてどうしてどうしておかしいなんでどうしておかしいおかしいおかしいここにはぼくしかなんでなんでどうしてどうして、
どうして『彼女』がここにいるんだ?
容姿だけなら僕だって他人の空似を疑う。でも、彼女は『彼女』だ。絶対そうだ。なんでこんな確証が持てるかって?だって、『彼女』は、前世(まえ)と容姿も性別も変わった僕を見て、呟いていたんだ。
「“ ”?」
性格も容姿も性別も、前世(まえ)の僕と結びつくものは一つもない。なのに彼女は確かに言った。誰も知らないはずの“アレ”を。誰かが知るはずのない“アレ”を彼女は知っていたんだ。
彼女は、『彼女』なんだ!!
僕は 『彼女』に 手を 伸ばした。
ぐしゃり
嫌われた僕の末路 (僕の手は彼女に届かない) (彼女に、届かない)
嫌われた僕の末路
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