「とうとう、ひとりだなぁ…お前。」


今日の呼び出しは、なんか知らないけど全く知らない人間がいっぱいいた。というか僕このW眼帯君以外知らないんだけど。誰?その女の子。僕はこれから買い物に行った後彼女を考えながら夕飯を作る予定だったんだけどな。見事ぶっ壊してくれてありがとう。それと、『とうとうひとり』と言う言い方は間違ってるよ。『やっとひとり』の方が正解だ。やっとひとりになりやがったな、じゃなくて。やっとひとりになれたね。の方のイントネーションでよろしく。


「もうお前の味方は誰1人いねぇ。you see?」

「…違う」

「あ?まだいるってのかぁ?いるなら呼んでみろよ!前田か?石田か?猿飛か?呼んでもどーせこねぇけどな!」


はぁ。馬鹿の相手は疲れるなぁ。僕がいいたいのはそんなどうでもいいことじゃない。というかそれらは一体誰だ。関係ないものの名を出すな。


「勘違いしてほしくない。僕に味方なんてもとからいない。」


必要性が感じない。興味が沸かない。どうでもいい。味方なんていらない。敵もいらない。何度も言うが僕は第三者、傍観者に興味があるだけで他に興味も何もない。彼女から与えられる居場所さえあればいいんだ。彼女のためになればいいんだ。それ以外の何かから与えられた居場所なんてどうでもいい。どうでもいい人のためになりたくもない。僕の全ては彼女だ。彼女の全ては僕じゃなくても僕の全ては彼女だ。残念だったな。彼女以外の人。僕にとってどうでもいい死んだ虫よりも価値のないものなのさ。


「味方なんていらないし。第一、」

「僕は『彼女』以外の人間に、必要性を感じない。」


言い切ってしまえば、周りの人間が唖然とするのはわかっていた。でも、言い切りはしなかったけど僕は何度も『彼女』の話をしてきた。気づかなかったのはきみらだ。気づこうとしなかったのはきみらだ。


“僕”が、【異常】だということに。

気づかなかった、きみらが悪いんだ。


数秒もすれば、唖然としてる目の前の人達の中の誰かが、笑い始めた。それは、伝染病のように。1人、また1人と増えていき。最後にはほとんどの人間が笑い始めていた。でもそれは、僕が笑顔から一瞬で真顔になれるように。一瞬で消えていた。


「ふざけんな」

「彼女とやらが  なら、俺はお前が理解できない。」


…あれらは一体何を言っているのやら。勘違いもはなはなしいなぁ。


「そんなものと『彼女』を一緒にしないでくれよ」


今までで一番表情が変わったかもしれない。そのくらい、彼は笑顔だったのだ。他人がぞっとするくらい。綺麗すぎる笑顔で、彼は言ったのだ。そんなものと、僕の大事なものを、一緒にするなと。彼以外の人間は最初理解できなかった。しかたないだろう、彼が表情を変えたことに関して驚いたのも確かだが、彼は「  が好きで告白したが振られてしまい暴行に走った」という話なのだから。


「僕がきみ如きを好きになり告白した。なんて事実もおかしな話だ。そんな事実どこにも無いのに。誰も見ていないのに。誰も確認していないのに。1人の証言だけなのに。」

「僕がきみ如きに暴行を加えた。というのもおかしな話だ。僕はその日放課後に呼び出しを食らった後スーパーに行っているんだ。そしてその後僕の家にて呼び出してきた人達を招き一緒にいた。きみに暴行を加える暇なんてどこにもない。しかもやはり1人だけの証言。」

「僕がきみ如きを犯した。とかもうびっくりするくらいおかしな話だ。じゃあなぜきみは僕と普通に相対できる?なぜ僕を警察に訴えない?あぁそうそう病院でちゃんと検査はしたかい?その精子は、ちゃんと僕のものだったかい?というかきみは処女なのかい?」


「なぁ?びっくりするぐらい何一つ確証がないだろう?」


これまたとびきりの笑顔で言えば、何人もの人間が動揺する。第一おかしい話なんだよ。なぜ誰も気づかないのか。なぜ誰も不可解だと思わないのか。

なぜ誰も他の可能性に気づかなかったのか。

そういえば僕こんなに時間がかかったけど、思い出したことが一つあるんだ。どこかで見たようなこんなお話。どこにでもありそうな理由からどこにでもありそうな嫌われにまで発展する。そんなお話。やっと思い出せたんだ。思い出さなくてもいいんだけどさ、『彼女』のこと考えてたら一緒にでてきたんだ。


「“夢物語”でくらいだよ。そんなことがうまくいく世界は。」


“夢物語”でも、うまくいくことは少ないけどね。王道バトル。最後のハッピーエンド。そんなものはどうでもいい。必要ない。僕が欲しいのは、たった一つだけ。


「つまり、間違っていたのは最初から君達だよ。」


指を刺しながら言えば、目の前の女の顔が、酷く歪に、ゆがんだ。



所謂僕は独りぼっち
(独り=弱い)
(だなんて)
(一体誰が決めたよ?)


所謂僕は独りぼっち