それから僕の状況は、少し変わった…というか戻った。

まず、長髪君は僕に会いに来なくなった。理由は知らない。今回の件でわからなくなって避けてるのかもしれないし、あれらに止められているのかもしれない。まぁ僕にとっては面倒くさいのが一つ減ってラッキーくらいの話なんだが。

そしてもう一つはバンダナ君に会わなくなった。見かけることはあるけど、毎回近くに…誰だろう、あれ?まぁ赤い鉢巻をしてる誰かさんが必ずといっていいほど隣にいて、僕の方を睨んでくる。別にそんな警戒しなくても僕から話しかけるなんてことはないのに。無駄な努力だと思う。

それから最後。絆君がご飯を誘いにこなくなった。それと同時に銀髪君にも会わなくなった。絆君とはよく会う。絆君は僕を無視するでもなく、普通に話したりする。前のような雰囲気ではないけど。ギスギスした感じ。そんなギスギスした雰囲気で話すくらいなら話かけてこなければいいのにね。
たぶん、銀髪君は絆君の配慮で会わなくなったんだと思う。ただの憶測だけどね。

まぁそんなわけで、つまり何が言いたいかというと僕には所謂何も残ってないわけで。


「…ふふ」


嫌悪。憎悪。殺気。無視。落書き。罵倒。呼び出し。リンチ。味方は0。
ああ、なんて最高な場所なんだ!ずっとこうだったら、なんて思うけど大事なものが一つ足りないから結局終わる。最終的に行き着く場所。それは同じ場所。現世(いま)も前世(まえ)も来世(さき)も。大事なものが一つあろうがなかろうが、全く同じ結末。何がどんなに変わろうと全ての最終地点。生物の行き着く場所。全ての始まり。終わりという人もいるけど、それは価値観の違いということで。


「ああ…やばいな。笑いがとまりそうもない。」


くすくすと零れる笑みをとめる気もせず、僕は歩く。
ああ嬉しい楽しい最高だ。僕には何も覚える必要がなくなった。全部彼女のことだけにまわせる。ああなんて楽しいんだ。ああなんて嬉しいんだ。もはやなんでもとに戻ったのかなんてはもうどうでもいいだろう。楽しいなぁ。楽しいなぁ楽しいなぁ楽しいなぁ!このままでいれればいいのに。なんてことは言わないよ?だってここに彼女はいない。それじゃあ、意味がないんだ。

くすくすと笑っていたのに、一瞬のうちに無表情になった。言葉通り、笑わなくなった。口元を歪めなくなった。瞳から歓喜の色が消えうせた。


「…あ、今日は冷凍物の日だ。早く帰ろう。」


呼び出される前に、僕は学校からいなくなった。



僕には何も残ってない。
(これほど嬉しいことがかつてあっただろうか?)
(現世では、ないかもしれない)
(あったかもしれない)
(まぁ、もう)
(どうでもいいけど)


僕には何も残ってない。