家の前で律儀にも待っていた人達を家の中へ入れ、僕の部屋で待っててもらう。お願いだから何も壊さないでおくれよ、なぁんて。壊すものがあるような部屋でもないんだけど。ああ探索されるだろうなぁ、別にベッドの下にエロ本なんてないよ。あんなちゃちなものに興味なんてないし。あれを読むくらいなら小説を読んでいたほうがいくらもマシさ。

買ってきた物を冷蔵庫に入れながら、そんなことを考える。ああそういえば今日の夜ご飯はどうしよう。あの人達が帰ってくるの今日早いんだよなぁ、確か。嫌だなぁ。面倒だなぁ。そうだ、無難にカレーにでもしようか。お肉あるし。ただ、あの人達の気分に合うかどうかが問題だ。今日がお肉の日とは知っているからお肉は絶対使わないといけない。今日はステーキの気分だとか言われたらどうしようか?いや、あの人達はそんなことは言わないな。お金を使うのを極端に嫌う人達だから。


「…あ、そういえばあれらはいつまでいるんだろう…夜ご飯、食べてくなら量考えなきゃいけないんだけど…。」


…しかたない。考えてもわからないから、聞きに行こう。面倒だけど。



聞いたところ、あれらはいらないと答えていた。ならばいらないだろう。ついでに夜ご飯の相談をしてみたらまずなんの肉があるのかというところから始まった。意外にも眼帯君がいろいろ料理について詳しいことが判明してしまった。どうでもいいけど。


「さて、じゃあ揚げ物にしようか。」


一応貰った意見を扱い、揚げ物にしようと思う。ああでもバランスがどうのこうの言い出しそうだからちゃんとサラダもつけなくちゃなぁ。レタスとキャベツがあったし、確かトマトもまだ残っていたはず。味噌汁はなめこの味噌汁にしよう。

上であれらが何をしているかなんてどうでもよく、僕は調理に取り掛かった。



▽△



バタンッ、ドアが閉まった音がしたと思ったらドタドタと乱暴な足音が聞こえてきて、ガッターンッと何かを壁にぶつけた音が響いてきた。さすがの俺等も驚き、部屋から出ようとしてしまったが、そういえば絶対下には来ないでくれ。と言われていたのを思い出した。あいつの言うことなんて聞きたくねぇが一応人の家なため、とどまる。

それからしばらくすると下から怒鳴り声と何かを殴る音。男と女がいるらしく、両方の罵倒の声が聞こえてきていた。俺は、昔を思い出して、凄く怖くなった。

最後に、ガッシャーンッという、何かが割れた音が聞こえたと同時に、声も聞こえなくなった。放っておけなかった。好奇心もあった。でも恐怖もあった。見ちゃいけないという昔の記憶からの声。でも、それでも、俺等はやつの言いつけなんて聞かずに、下へと降りていった。



▽△



目の前に広がった光景は、信じがたいものだった。


血まみれのあいつ

仲良く談笑し飯を食っている大人


有り得ない。なんで血まみれの人間がいてもなにもないことかのように飯が食える?笑える?見てみぬふりができる?目の前の光景に絶えられなくなりそうだった。伊達を見てみれば、固まったまま動かない。俺もそうだ。皆そうだ。理解できない。受け入れられない。俺等が固まっていれば、談笑しながら飯を食っていた男が俺等に気づいた。目を見開いた。あいつをにらみつけた。そのまま、あいつに――




「ああ、だから来るなって言っておいたのに。」


金を渡され、口封じをされてかえっていったあれら。その後なぜ人が着ていることを言わなかったとまた暴行暴行暴行。人が口を開く前に顔をぶん殴ったのはどこのどいつだ。言わないけど。ああいうやからは口答えをするだけ無駄なのだ。おとなしく暴行を受けて、おとなしく言うことを聞いておけばいい。それが一番楽な道なのだ。そういえば、眼帯は異常なまでの怯えを見せていた気がする。きっとあれの家庭も似たような場所なのかもしれない。どうでもいいけど。傷を放っておいてもいいけど血とか垂れ流しにしておくとまたあの人達が怒るからちゃんと手当てをしておく。最初は苦戦してたけど、今じゃあ鏡を見なくても頭に包帯を巻けるようになってしまった。どうでもいいけど。


「…そういえば、頭に怪我するのは、久しぶりかもしれないなぁ」


いつも見えないところしかやらないからこれは大誤算であろう。僕は超人なんかじゃないから怪我が一日で治ったりしない。普通だろう?明日はこの格好のままかぁ。どうでもいいけど。


「……寝よう」


こういうことになるのを予想してご飯は作っている最中食べた。あんまり食べ過ぎると吐くから少しだけ。味見程度。風呂は…明日入ろう。今下に行ってあの人達の邪魔をするわけにはいかない。これ以上傷を作るのも面倒だからだ。

寝床に入って、僕は彼女を思い浮かべながら意識をなくした。



僕は、何のために生きているのか判らない。
(こんな世界で)
(“判れ”というほうが)
(無理だろうけど)


僕は、何のために生きているのか判らない。