あの日から何日も、いや何週間だったかもしれない。それほどの日数をどうにか生きて彷徨っていた。何度も死に掛けたけど、悪運が強いのかなんなのかどうにか今生きていた。

まぁ、そんな悪運ももう終わりそうなのだが。


「…今死んだら、帰れんのかなー」


リクと未央にも会えなくて、なかなか睡眠もとれなくて、栄養失調と疲れが酷い。あと怪我もそれなりに酷い。
そんな常態だったから、今はもう一歩も動きたくねーとどこやらわからない建物に背中を預けてまだ起きてる状態だ。たぶん意識失ったら死ぬわ俺。佐助君もこんな状態だったんじゃないだろうか?

また4人で遊びたいなぁ、なんてことを考えていると聞こえてくる足音。
その足音2人分で、話し声が聞こえてくる。聞く限りによると俺に気づいてる様子はないんだが………、


チキリ、目の前に向けられた刃を見て、上を向く。
そこには、銀髪で機嫌が悪そうな男とそんな銀髪を止めようとしている黒髪がいた。


「貴様、ここがどこだかわかっているのか」
「おい三成!無闇に刀を向けるな!」
「煩い家康!私は今こいつに聞いているんだ!お前は黙っていろ!」


どうやら2人の仲はよくないらしい。なんか俺放置で喧嘩し始めたぞこいつら。いや刃物は怖いから向けられなくなって清々するんだが、だからといって放置とはいかがなものなのか?いや、今あんまり頭回らないし、正直今の俺に2人の喧嘩を遮ってまで話せる力もないのだが。

でもなんか、リクと未央の喧嘩見てるみたいで落ち着くなぁ…この2人。


「だから貴様は甘いんだ!………というか貴様、その緩い表情をなんとかしろ!そして私の質問に答えろ!残滅するぞ!!!」
「三成!そんな簡単に暴力に走ってはいけない!話し合いで解決するんだ!」
「あ、俺或人っついます。絶賛死にかけてるしがない青年です。できれば寝床と食事をくださいなんでもしますから本当マジお願い」
「黙れ家康ううううう!秀吉様に仇名す者は私が手折る!」
「絆の力を広めるんだ、三成!」
「まさかの完全総スルーにお兄さん動揺を隠せないよきみ達…!」


自分から聞いてきた癖にスルーとは何事だ…!これがゆとりなのか!あ、俺もゆとりだった。ついでにここは戦国時代である。ゆとりどころか弱肉強食だ。
俺はまさか総スルーで死亡するのだろうか?折角人に見つけてもらったのにそれはあんまりだ。でもこの2人話をきいてくれる雰囲気じゃない。いや、主に銀髪が黒髪に喧嘩売ってるだけだけど。元気いいなこいつ。

眠いのやら疲れたのやら空腹やら痛いのやら全部ひっくるめて押し込んで無理矢理に立ち上がる。俺が行動しないとたぶんこのタイプは俺に興味を持ってくれない。いや、さっきから興味はあるらしいが2人共俺の話を聞いてくれるには程遠いだろう。


「貴様!勝手に動くな!残滅するぞ!」
「そうだ!怪我人なのだからあまり無茶をしてはいけない!三成も刀をしまうんだ!」
「こうでもしねーと話聞いてくれねーだろうが…そして刀はどうでもいいからお前はあまりつっかからない」
「だが、」
「いいから話聞いてくれって。俺は或人。お願いだから寝床と食物を恵んでください。雑用でもなんでもしてやるから」


治療は別にどうでもいいから早く飯をくれ。飯食わないまま寝たら俺死ぬだろうから飯だけはどうにか腹に入れる。それから睡眠を取る。全部終わったら…100円玉でもあげよう。ここじゃいろんな意味でお宝になるだろうから。


「ならばわしらの城へ来い。そんなボロボロでは死んでしまう」
「家康ぅ!貴様こんな間者かもしれん奴を秀吉様の城へ上げるというのか!」
「この男が間者ならばなおさらだろう!ここに放置はしておけない!」
「間者ならば今すぐここで殺せばいいだけだ、城へ連れて行く必要などない!」
「それではダメなんだ三成!」


壁に手をついたままで話すが如何せん、黒髪は協力的だが銀髪が全く協力的じゃない。完全敵視されている。
つーかかんじゃってなんだ。話の流れからして悪い奴だろうと思うけど…まぁどうでもいいか。

いい加減倒れそう、てかもう倒れていいかなこれ?倒れればいいよねこれ?次起きたとき生きてたら…そのとき考えよう。


「…だから貴様は、っ!?」
「三成、或人!」


思いっきり倒れた方向が銀髪の方だった気がするけど、放置したお前等が悪いということで。




進行形のままの過去
(死んだら帰れるのか死んだら帰れるのか死んだら帰れるのか死んだら帰れるのか)
(幾度となく自問自答してきた言葉の答えは、次起きれたときに知れるだろう)