誰もいない。それが今の現状だった。

あのあと、もう諦めてバイトに行って、もしかしたら2人で久しぶりに遊んでるのかもなーと軽く考えてた。そうであってほしかった、希望的観測と言った方がいいな。
けれど自体は一刻を争うようで、バイト終了時に携帯を確認してみたら不在着信が何件も。どれも未央とリクの家から。それと学校からも何件かきていた。

電話をかけ直してみて数秒でコールが途切れ、未央の母親の声がする。


『もしもし?或人君?あの、実は――』
「帰って、ないんですか。未央とリクは」
『…ええ、そうなの。未央を見つけたら連絡くれるって言ってたじゃない?けど、結局連絡が来なくて…しかもリク君も家に帰ってないっていうから、心配になって…或人君は知らない?』


未央の母親が言ったことは全て予想内の出来事だった。希望的観測は希望で終わった。
嘘をつく意味もないので素直に知らないと返す。未央を探すため二手に別れた後連絡してみたのだが繋がらなかったことも伝えた。

きっと明日にでも捜索願が出てるんだろうな、と思いながら小さな、それでもLEDだからとても明るく照らしてくれるライトを出す。ちなみに100均だ。


「かーくれんぼしーましょ、ってか」


どこの小学生だよ、小さく呟きながら全速力で駆け出した――。



▽△



ぱらぱら、ごろごろ。
安直な効果音だけど実際にこんな音なのだから仕方ない。
ぱらぱら、ごろごろ。
傘に雨が当たる音と、空が唸る音。

そう、雨と雷がやってくる音だ。


「………土砂降りになる前に帰るか…」


今は小粒の雨だがすぐにでもバケツを引っ繰り返したような雨に襲われるだろう。酷く濃い雨の香りと今にも光りだしそうな空がそう告げている。
結局リクも未央も見つからなかった。連絡を取り合ったりしたが手がかりが一つもない。捜索願はだされた。手は、尽くしたということだ。

理解していながら走り回った俺を世間は馬鹿と評価しないだろう。一部はするかもしれないが、気持ちはわかるというやつだ。経験してなくても想像できる、ってな。


「…鬼さんはもう限界、降参。かくれん坊主は無事鬼をやり過ごし、食われることなく生きましたとさ」


めでたし、めでたし。
呟くと同時に、空は光り視界が白に覆われた。


―――道には、誰もいなかった。




かくれん坊主はいきていた
(でも)
(鬼はかくれん坊主を探すために)
(一生懸命、いきるのでした)