ぼろり、ぼろりと。
世界は崩れ始めてたことに気づかなかった。


「あれ…リク、未央は?」
「まだ来てねーんだよそれが、連絡したけど繋がらねーし…」
「珍しいな」
「高校入ってからこんなことなかったのになー…無遅刻無欠勤目指してたし」


皆勤賞狙ってたのに…どーしたんだろうな?そう言うリクにさぁな、と返して席に座る。
確かに未央が来ないのが凄く気になるところだが、まぁ少し遅くなってるだけだろう。

勝手に脳内でまとめて思考を破棄する。

フラグだろこれ、と思わないでもなかった。





「…結局未央のやつ、こなかったな」
「……………だなぁ」
「家、行くんだろ?」
「もちのろんだろ。連絡もよこさないとかありえねぇ…今度絶対ナンパ同行決定だ」
「たぶん普通に断られるだろうな」


未央と一緒にいないリク見るの久々だなぁとおもいながら帰り道を歩く。
基本あの2人はセットでいて、いつも喧嘩してるから単品でいるのを見ることは少ない。ああでもナンパのときは皆単独行動しているけど。


「…なぁ、あのさ、未央と話してたんだが…」
「んー?」
「…今度、3人で…………いや、やっぱなんでもねーわ」
「ナンパならいかねーぞ」
「なんでだよ!?お前等はもっと男としての本能と向かい合うべきだ!」
「知ってるか?今は知性ブームなんだぜ?」
「なにそのブーム!?」


絶対お前今勝手に作ったろ!と叫ぶリクを全力でスルーして未央の家のチャイムを鳴らす。

しばらくして出てきたのは、未央のお母さんだった。


「はーい…ってあら、リク君に或人君」
「どもー、未央いますか?」
「未央?まだ帰ってきてないけど…?」
「…え?」


未央のお母さんが言った帰ってきてない、という言葉。つまりは家を出たということが確実となった。でも未央は連絡もよこさないし、学校にも来なかった。

つまりまとめると、そうゆうことで…。


「…もしかして、学校行ってないの?」
「えっ!あ、その…はい。連絡も、つかなくて…」
「リク、俺行くわ」
「は?っておい或人!あ、未央見つけたら連絡いれますんで、んじゃ!」
「ちょ、リク君或人君!?」


未央のお母さんが引き止める声が聞こえたけどそんなことに構ってられる暇はなかった。

未央がいない。
あの少なくとも俺等より真面目な未央が学校にも行かず、俺等に連絡もよこさなかった。珍しいとかそうゆうレベルの話じゃない。もはや、これは異常だ。

後ろからリクが追いかけてくるのを足音だけで確認しながら携帯で連絡を入れる。繋がれ、と思う願いを無視して電話からはすぐに電波が届かないところにいるか、電源が入っていないため…と無機質なお姉さんの声が聞こえた。
そんな電話の向こうから聞こえてくる無機質なものに舌打ちを隠さずにして、電源を切る。

未央がいるような場所と言えば、川原や公園。よくあいつは空や植物を撮っていたからそこかもしれない。今回のだってただのサボリかもしれない。そう、真面目ゆえの息抜き。


「っおい或人!俺向こう探してくる!」
「おっけー、俺はあっちの公園と神社見てくる。いたら連絡よこせよ!」
「わーってる!」


リクと二手に別れて、別々な方向へと走る。
俺よりもリクの方が未央がいる場所を知っているだろう。2人は俺と出会うより前に出会ってるんだ。幼い頃の思い出の場所、というのがあってもなんらおかしくはない。
それから公園を巡ったり、神社を巡ったり、近くの畑や川原、河川敷を走り渡った。

結果はどこにもいなくて、どうしようもなくて、リクに電話した。


『おかけになった電話は、現在電波の届かないところにおられるか電源が入っていないため―――』


電話から聞こえるのはまたも無機質な女性の声。一度切ってもう一度かけ直してみたけど同じ。未央の電話からもリクの電話からも聞こえてくるのは全く一緒の声。


「………うそ、だろぉー?」


望んでもいない世界が崩れる音を感じながら、思わずへらりと笑ってしまった。




せかいがくずれたおとがしたの
(望みはただ皆が仲良くしてるのを見たかっただけなんだよ)
(なのに、なんでその皆がいないんだよ。なぁ?)
(俺がなんかしたと、そういうのか…?)