奥州と同盟、北条と同盟。
そしてこれはほんのりと聞いた噂なのだが最上のところが東軍に入るために家康様に『土産』を用意しているとかなんとか。

それが、俺の持ちえるとても少ない情報だった。


「…やれ、奥州と北条ならばこちらにつくことなど無に等しいからそこは予想通りよ。…して?その『土産』とやらの話は…ぬしはなんなのか、知っているのではないか?」
「………さぁ?それよりも刑部様、俺はちゃんと情報を吐いたのだからそちらも教えてくれてもよくないですか?」
「ヒヒッ、覚えておったか。なぁに対価を貰ったからには対価を送るのは当然のことよな。嘘などつかぬ、ほれみろ舌もある」
「刑部様の場合それは嘘をついている、と言っているのと同義語ですよ」


思わず笑いながら返せば、刑部様も笑う。
俺、腹の探り合いは得意じゃないんだけどなぁ。思わずはきそうになった溜息を、飲み込んだ。


「ぬしの探している友人とやら…どっちかは知らぬが、そやつはなぁ…」


にやり、にやりと刑部様の楽しそうな表情が見える。
いい予感なんて、しなかった。


「風来坊…最近までは上杉のところに留まっていたようだが、今は雑賀衆を追っかけまわしておるときく。…主のことだからもうここまで言えばわかろう?」


雑賀、雑賀衆。この間家康様と一緒に契約しに行ったばかりだ。風来坊、というのが誰だかは知らないけど…あぁ、なるほど。こりゃあいい予感なんてしないわけだ。

雑賀を追い掛け回している、というのは一見悪いほうの、ル○ンを追い掛け回すとっつぁん並に悪いほうに聞こえるがそれとは違うのは刑部様が言っていることであかる。
追い掛け回している、つまりストーカーのような、恋慕のような意味で使うとなるとまた意味が違ってくる。
捕らえたくて追い掛け回しているのではなく、慕っている意味で追い掛け回しているやつと一緒にいるとすれば…。


「…本当、性格悪いですよねー…刑部様って」
「ヒヒッ褒め言葉として受け取ろう。して?ぬしは、どうする?」


逃げるか、残るか。
なんでここの人たちは選択技を与えてくれるくせに選ばせてくれないのか。

思わず、爪を噛み契った。




嬉しくない知らせ
(俺が風来坊にでもなればいいのかこれは)