起きたら目の前に般若の顔をした銀髪がいたとか信じたくないからもう一度寝ようとおも「起きろ」痛い。すぐに殴る癖をやめてほしい。数少ない脳細胞が死亡してゆく。
殴られた頭をなでながら起き上がる。記憶がすっぽり抜け落ちていたが、どうやらあのあと俺は案の定刀で殴り殺されたらしい。生きてるじゃんってツッコミはなしの方向でよろしく。


「おはようございます三成様、相変わらず不機嫌そうですね」
「秀吉様を裏切った挙句のこのこと帰ってきた愚か者を目の前にしているのだから機嫌などよいはずがあるか!」


ビュンと酷く鋭い音を鳴らして俺の隣に振り落とされる刀を思わず二度見する。あれ食らってたらさすがに死んでたろ俺。というか刀抜かなくてもこいつ普通に人殺せるだろ。まぁ拳で人殺す人がいるんだからなんとも思わないけど。
やっぱりどっちに転がっても死亡フラグだったか。舌打ちしたくなる心情を隠しつつこんな状況に陥らせた刑部様を理由に使わせてもらうことにした。


「三成様に告げなかったのは大変申し訳なく思っております。刑部様の命令で家康様のところに間者として紛れ込んでいました。やはり元々豊臣として使えていた身のせいで重要な情報は入手できませんでしたが…」


凄い、凄いぞ自分。よくもまぁこんな一瞬でこんなごまかすための言い訳が思いついたもんだ。それっぽい。凄くそれっぽい!せめてこの力を大嫌いな作文のときに生かせればよかった。

刑部さんのことだから問い詰められても肯定してくれることを信じて嘘を吐く。
どっちにしろ合意の上であちらに入ったわけではないからこれでいいのだ。俺は、友人を見つけられれば…それでいいのだ。


何か言いたそうな表情をした三成様に気づかないふりをして、刑部さんのところへ取り引きをしに向かうことにした。




正直者は馬鹿を見る
(別に嘘吐きじゃあ、ないんだけどなぁ)
(でも友人見つけて生きたいだけだから、必要ならば嘘吐きにでもなろうじゃないか)