最近、兄はマフィアになったっぽい。
「…結局わかったのそれだけじゃん」
皆はボスに呼ばれてここからいなくなっちゃったし。見張りらしき人しかいないよ全くもう。てか寒い。超寒い。冷え性ってのも拍車かかって余計に寒い。
わかったことは兄がマフィアになったことと、私が人質なことと、彼等があの子供家庭教師が言っていた「気をつけろ」という相手なことと…
それと、彼等のボスと私の兄が、戦うこととなっている、こと。
「………どこの漫画だっつーの」
兄がマフィアで、ボス候補で、ボスになるため敵と戦う。
普通に考えてこんなことはありえない。というか有り得ていいのかそんなこと。
あったとしても1/100の確立だろう…あ、つまりそれに見事に当たったのか。兄は。
なんとなく、だけど。
オタクの妄想でしかないけど、それでもなんとなくわかった気がした。
兄が怪我して帰ってくるようになった理由とか、
変な家庭教師や居候がいる理由とか、
兄に友達ができた理由とか、
兄が笑うようになった理由とか、
全部、そうゆう絡みなんじゃないかな、とか。
なんとなく自分の手を見る。なんかナイーブな気分になるときって手見たりしない?そんな感じで手をみてみる。なんかなぁ、なんといいますか…落ちこぼれ兄妹って言われてたのが懐かしいというか…やっぱり皆進んじゃうんだな、と。
らしくないネガティブモード一直線になりつつも、やはり人がくる足音に気づけるだけの余裕はった。
「…どーも」
「ハッ」
「奥さん鼻で笑いやがりましたよこのガキ」
「ガキはどっちだガキ」
まぁ、確かに私のがガキですけどさ。てかあれだな。顔怖いこの人。
誰だろう、と思いつつ会話を続けることにした。
「お兄さん誰っすか。そして寒いんですけどどうしよう」
「知るか」
「なにこいつ酷い」
男ならその引っ掛けてるだけの上着をよこすべきだろう。この怖顔め!赤目野朗!ちくしょう赤目とかかっこいいんだよばか!身長高ぇじゃねぇかばかっ!
もはや貶そうとしてるのに妬みしかでてこない自分の脳内がにく…いや、あいつのイケメンさが憎い。むかつく。辛い。
ってまぁそんなことはどうでもいいこととしよう。まずはこの人が誰なのかってところからいこうと思う。ってゆうかまぁ、どっからどうみてもラスボスなのには間違いなさそうなのだが。
ふぅ、と息を吐く。ああ息が白いや。ここってそんなに寒いんだ。なんてこと考えちゃったりしてね。
「何用でしょうか」
「てめぇ…何も知らねーんだってな」
「うん?あぁ、綱吉に関してとかそのへんか。ご名答。何も知らないよ。何も聞かされてない。だから、綱吉に関する質問されても答えられないから。」
「ハッ…使えねぇな」
「そりゃあ、まぁ。ただの引きこもりですからね。」
「チッ…血が繋がってるっつーのに何も受け継いでねぇのか。カスが、ただのハズレに用はねぇ…死んどけ」
ガチャリ、黒光りしたものが向けられる。拳銃。本物なのかな、だとしたらはじめてみたな。なんて場違いな考えもったりしてさ。死ぬのかなとか、一瞬で死ねればいいなとか、痛くないといいなとか。
とりあえず、死ぬなら一つだけ伝言を頼もうと思う。
「殺すなら一つお願いがあるんですけど」
「…なんだ」
「綱吉の野朗を、ぶん殴っておいてください。あと死ね糞野朗といっておいてください。」
「…ハッ、くだらねえ。言わなくたって俺が殺す」
「いやそうゆう問題じゃなくて、とりあえず伝言的なあれで伝えといてくださいよ。」
じゃあ、よろしくおねがいします。
その言葉を最後に、ばぁんと1回。酷く煩い音が響き渡った。
引きこもりと願望
(死ぬのって、痛いんだなぁ)
(…まぁ、遺体っていうくらいだからなぁ)
(………今むちゃくちゃ寒いこと言った気がする)