引きこもりと忠告



最近、兄がよく怪我をして帰ってくるようになった。


「…遊びに行っただけのはずなのになんで怪我してんの?」

「…ちょっと、予想外なことが起こりまして…」

「へぇ。まぁどうでもいいけど。…父さん、帰ってきてるから。でも今酒飲み終わって寝てるから。挨拶するなら明日にしときな。」

「えぇ!?もう寝てるの!?いまどき小学生でもこんな時間に寝ないよ!?」

「長旅で疲れてたんじゃないの?ま、どこにいってたのかなんて知らないけどさ」


ご飯できてるから早く母さんのとこ行ってあげなよ。兄にそう伝えて自室へと戻る。否、戻ろうとした。

階段を少し上ったところで、あの子供家庭教師に呼び止められた。


「…なに?」

「気をつけろ」

「なにに?」

「いろいろとな。オメーはツナの家族だってこと忘れんなよ。」

「意味わかんないんだけど、」

「家光にも言われただろ」


父さんの名前を聞いて、少し固まる。なんでこの子供が父さんを呼び捨てにしてるんだとかはまぁ置いておこう。
問題は、いなかったはずのこの子供がなぜ私が父さんになにかを言われたことを知っているのか、だ。

確かに父さんに意味のわからないことを言われた。意味深な言葉。
理解なんてできなかったけど、何かを察するには十分で。


「オメーはツナに一番ちけぇんだ。その分危険だってことも忘れんじゃねーぞ」

「なんで綱吉に一番近いと危ないのか、まずそれから教えてほしいんだけど」

「お、ママンが呼んでやがる。ま、とにかく気ぃつけろよ」


明らかに逃げたのがわかりつつも、それ以上問い詰めようとは思わなかった。面倒だったのもあるけど、これ以上知りたくなかったのかもしれない。
でも、もうあそこまで言われると確実に兄に何かあるのは疑えない事実で、


「…綱吉に聞けば、きっと全部答えてくれるんだろうな」


聞こうだなんて、思わないけど。
いつでも聞けるんだから、今じゃなくてもいいんだから、だから、今は、まだ

このままで。



引きこもりと忠告
(まぁどうせ私は引きこもりだから)
(特に何もおきないだろう)
(家に何か、起こらない限りは。)

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