引きこもりと報告



最近、兄は入院するようになった。


「迷惑かけんなっつったのに」

「ご、ごめん…」


吐き捨てるように言えば、すぐに謝ってくる兄。知らされて母さんと一緒に病院にきたときは皆酷い怪我で、昏睡状態だった。…というかただ気絶してたり寝てたりの人もいるんだけど。

何日か通ったけどなかなか目覚めなくて、
そして今日やっと目覚めたから上記の言葉を吐いたわけだ。


「でもよかったね、歯抜かれなくて。この年で差し歯とか辛いよ。」

「そ、そうだね。はは…はははは……、」

「……………。」


俯いて何かを気にしているような素振り。お前、どうしちゃったわけ?と聞きたくなった。確かに友達の安否は気になるだろうけどさ、一応妹である私の前でそんなソワソワしだすような奴じゃなかったじゃん。とりあえず自分の無事を喜んで、思い出したように友達とか気になりだすようなやつだったじゃん。

これがあの子供家庭教師の影響だとしたら、それはそれで凄いことだよね。

そわそわとし、周りをチラチラ確認する兄に小さく溜息。お前筋肉痛が殆どだったとしても怪我酷いのに変わりないんだから自分のことをもっと労わってあげないさよ。


「お友達は今カーテン閉まってるけど、その中だよ。皆怪我酷いけど死ぬ事態にはならないって。ってかまぁ三日もたってるんだから死ぬ子はもう死んでるだろうけど。」

「へぇ三日…って三日ぁ!?」


煩い。一言呟けばハッとして口を塞ぐ兄。いや、もう叫んだ後だから遅いんだけど。

兄の外傷は他のメンバーから比べると果てしなく軽傷だった。いや、全身筋肉痛だったし見た目超ぼろぼろだったから軽傷とはいえないんだけど、皆と比べると軽傷だった。一番弱そうな見た目だから一番ぼろぼろにされると思ったんだけど、一番弱いからこそ放置だったのかもしれない。

…まぁ、本来の事情は、どうやっても知ることはできないのだろうけど。

母さんに連絡入れとくから、さっさと治して母さんの心配をなくしてあげなよ。兄にそう言って鞄を持って病室から出ようとする。他の奴等は確認しなくていいのかって?いや、だって別に身内でも友達でもないし。


また聞こえた背後からの「ありがとう」に、振り向かず手だけをあげておいた。




引きこもりと報告
(あ、もしもし母さん?綱吉目覚めたよ。)
(…うん。他の子はまだ。)
(私今から帰るから。母さんきてあげなよ。)
(…大丈夫。夕飯の準備ぐらいしとくから。…じゃあね)

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