最近、"スペードさん"に会わなくなった。
「…死んだか」
ぽつりと、それはとても自然にこぼれた言葉。確信も確証もなかったけど、その言葉はあまりにストンと、パズルのピースが嵌るかの如く一致した気がした。もしかしてこれが超直感なのだろうか?いや、絶対違う気がする。というか死んだときしか働かない超直感なんて嫌だ。
近くにおいておいた珈琲を手にとる。珈琲は苦いから好きじゃない。紅茶も緑茶もおいしくないから好きじゃない。私が飲めるお茶なんて麦茶ぐらいだ。
でも、今はなんだか…無償に苦いものが欲しかった。
「…にがい」
当たり前すぎる感想。にがい。でも、あまったるいものはもういらなかった。にがくておいしくないものが欲しかった。
きもち、わるい。
「嫌われるのは面倒だったけど…愛されるのも面倒なんだっつーの」
私がいないあいだ兄にどんな変化があったのなんて知らない。興味もない。でも、あの変わりようはいただけない。何度も人に、主に私に迷惑をかけるなと教えておいたのに中学にあがってからは迷惑しかかけられてない。いやまぁ、最初からこうなることは決まっていたのかもしれないけど。
大体にして私達があの"ジョットさん"と血が繋がっていた時点でダメなのだ。未来など問答無用で決められていたじゃないか。どうせなら一定の年齢まで隠す方法ではなく幼い頃からマフィアとして育ててくれれば私も兄もここまで歪むことはなかっただろうに。
この間兄に死ねばいいと思っていたことを暴露した後のあの兄の笑顔と寒気。
そして兄は気づいていなかったようだが小さく開いた扉から全てを聞いていたあの子供家庭教師。
ああ、最悪だ。
今すぐ全てを破壊してこの場から逃亡したいぐらいに最悪な気分だ。
「死にたい。生きたくない。逃げたい。めんどい。助けろ。痛いのは嫌だ。」
ああ、あああああああああああ!
「…ころしたいなぁ」
1回殺してるけど、もっとド派手に人を殺してみたかった。
次は死ねるのかはたまた生きるのか、それさえもわからない今の現状。
終わると決まっていない今、包丁を持って人を殺しに行ったところでどうなるかわからない。というかたぶん私が部屋から出るのを彼等はよしとしないだろう。軟禁。監禁にの方がいいかもしれない。ああ、全くもって億劫だ。
本当、死ねよおまえら。
引きこもりと生死
(私はお前等の都合のいい玩具になんてなった覚えはないんだ)
(でも、私には力も努力も度胸も勇気もないから思わせていただくことにする)
(全員、死ね)