ベッドから起き上がれば、いつしかの"スペードさん"がいた。
どうやら、終わったようだ。
「………楽しかったですか?きみの描いた夢物語は」
「面白かったですよ、面倒でしたけど」
「夢から覚めてよかったんですか?気づかないフリをすれば、全てやり過ごせたというのに。」
「ただの好奇心ゆえの行為ですよ。私が気づいてるフリをして言えば、どうなるのか。ただそれが見たかっただけです」
本当は何かに気づいたわけじゃない。ただ、普通に考えればあの世界で私の立場は異端で異物だ。
けれどそれは相手から見た感想。私から見れば、彼等が異物で異端だった。我ながら横暴だと思わないでもない。
結局その仮説は当たっていたのかさえもわからないが正直どうでもいい。"スペードさん"が言ったとおり私が心のそこで望んでいた世界ならそれでもいい。
ただ、とにかく今はあの甘ったるい飴を捨ててしまいたかった。
「もう一度、見ますか?」
「いいえ。甘ったるい夢はしょうに合わないようなので結構。胸焼けしてしまいますので」
「甘味で胸焼けなど夢の限りじゃないですか」
「夢は夢だからいいんですよ、"スペードさん"」
本当に胸焼けしたら気持ち悪いだけでいいことなんて一つもない。夢は夢だから綺麗なのであってよく見れば汚いものが沢山だ。まぁだからといってトリップしたくない、なんて思わないけど。
さぁて、甘い毒を抜くために、苦い薬を貰いに行こうか。
「ねぇ、そう思わない?――――綱吉」
信じられないものを見るような眼で、私達を見ている兄がそこにいた。
引きこもりと甘毒
(甘く、甘く。甘ったるく気持ち悪い毒を抜く為には)
(苦く、苦く。苦くて吐き出してしまいたくなる薬が必要なようですよ?)