引きこもりと愛夢



ユメを、観た。


「月奈!」

「あ、綱吉!それに皆も!」


いつも通りベッドに座って本を読んでいたときに現れた来訪者。
しかも、兄だけかと思ったら兄の友達である皆もきているではないか!


「よっ!最近来れなくてごめんな、」

「ううん。こうやって来てくれるだけでも嬉しいよ。山本君」

「お、俺は別に…10代目のためなんだからな!」

「わかってるって。ありがとう獄寺君」


パタン、と音を立てて本を閉じテーブル…とは言えないが、ベッドに備え付けられている机に置く。
最近はよく兄やその友達がきてくれて嬉しい。前は兄1人できて、兄1人で帰っていたから。友達ができたことも喜ばしいことだ。

それから皆で談笑していると兄の家庭教師と言っているリボーン君もきたりして、凄くにぎやかだった。



―――――
―――



「う"ぉぉおい!月奈じゃねぇか、どうしたんだ?」

「綱吉のお手伝いだよ。最近大変そうだから」


ほら、これ。とスクアーロさんに見せるように書類を掲げる。
彼はわかっていたのか書類に少しだけ視線をやっただけですぐ私に戻し、それにしても、と話を続けた。


「それにしても…、お前も大変そうだよなぁ」

「スクアーロさんや綱吉達程じゃないよ、それに毎回こうやって養ってくれるからね。皆。お手伝いのはずが旅行にきてるみたい」


よく兄の手伝いで書類を届けに行ったり、情報を届けに行ったり、任務を受け渡したりしているがそれは別段苦でもなんでもない。

むしろ毎回行く度にジェラードや紅茶など淹れてもらっている私なんか全然大変でもなんでもないだろう


「ま、強ち間違ってもねぇかもな…行く先は全部マフィアだが」

「あはは…まぁでも、楽しいからいいかな」


行く先の話をされてしまっては御終いだが、別に後悔なんてしてない。
ただ、願うのは皆が死んでほしくない、ということだけ。

戦闘員でもなんでもない私は、人質にならない程度の護身術だけを覚えて今日も忙しい皆のために少し手伝うだけなのだ。



―――――
―――



「あ、白蘭さんじゃーん。部屋にきてもマシュマロはないですよー?」

「やっほー月奈チャン♪ここの生活にも慣れたかなって思ってね」


そう話す白蘭さんは相変わらずマシュマロを手に持ったままだった。そんなにマシュマロばかり食べて飽きないってのが凄い。

白蘭さんの質問に答えるかの如く両手を広げて、完全に私使用に散らかしてある部屋を主張するように見せた。


「どもどもー見てのとおり超快適に過ごさせてもらっちゃってまーす」

「うん。それはよかったと喜ぶべきなんだろうけどせめてゴミくらいゴミ箱にいれようか?」

「あーゴミ箱いっぱいで後で交換しようと思って放置しっぱだったまじさーせん」


ちゃんとゴミいっぱいになったら隊員に渡してって行ったでしょ?
さーせん面倒くさくて。
お菓子抜きにするよ。
さーせん。

そんな会話をしながら軽く近くにあるゴミを片付ける。が、如何せん正直放置しっぱなしだったので結構部屋が汚い。ゲームとか出しっぱなしである。

そんな部屋の様子に白蘭さんは苦笑を一つ零した。


「…よし、掃除し終わったら一緒にマシマロ食べようか」

「よっしゃー月奈さん張り切っちゃうよー!」


相変わらず現金だねーというBGMを聞き流しながら部屋の掃除を進めていく。
現金なのは百も承知なので今更どうとゆうことでもなかった―――




―――他にも色々観たが、まぁ割愛させてほしい。短編映画の集まりのようなものだったのだ。詳しくは覚えてない。

ただ、一つだけ全てに共通されていたことを上げると、それは私が兄と必ずしも双子であり、そして私が全て愛されていたことであろう。

思い出した限りでは私が嫌悪されている、もしくは私とドライな関係にある人は誰も出てこなかった。
出てこなかっただけでいる可能性はあるのだが、まぁとにかく私は愛されていたのだ。兄や、その周りの人間達に。


「―――“私”は、あんなに愛されて…疲れないのかねぇ」


程よく嫌悪されていた方が、楽だろうに。

嫉妬ではなく、純粋なる思いで吐いた感想は
1人しかいないジェット機内に、浮かんでは消えていった。




引きこもりと愛夢
(全員から嫌われ、王道的な嫌われ小説やいじめに発展するなら嫌だけど)
(程よく一部から嫌悪され、程よく興味をもたれなくて)
(それなりに少人数の友達がいて、)
(…あんなに愛されて、本当…よく疲れないなぁ)

(私なら、あんな世界)
(心の底から願い下げだよ)

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