これが最後だといわれて向かった先は、特に知らない場所だった。
兄達と戦った人もいるらしいから気をつけろ、ねぇ…。
「…はじめまして、ボンゴレ10代目・沢田綱吉の使いできた…」
「話は聞いてる、沢田月奈だろ?奥で姫が待ってる」
金髪オールバックの人に案内され、奥へと連れて行かれる。
姫、というのはきっと"ユニさん"のことだろう。あの子供家庭教師から名前だけは聞いている。
大空のアルコバレーノ云々だから手出したらぶっ殺すとか不吉なことを言われたが気にしないこととする。
目の前の金髪オールバックさんが、一つの扉の前で止まる。
私もそれに釣られて止まれば、彼はドアをノックした後に何かを呟いていた。生憎、日本語じゃなかったから聞き取れなかったが。
入れ。
金髪さんの言うことを聞いて部屋へと入る。彼は外で待機なようだった。
「はじめまして、沢田月奈さん。」
「…どうも、はじめまして。ボンゴレ10代目の使いできました。」
「はい、存じ上げています。自己紹介が遅れましたね、私はユニといいます。先程のはガンマ。悪い人ではないので、その…勘違いしてあげないでもらえるとありがたいです」
随分とませた子だなぁ。
それが最初の第一印象。敬語使いこなせてる感がはんぱない。礼儀正しいっていうレベルじゃない。凄すぎる。そしてまた美人かちくしょうめ。
私の周りのイケメン度は異常、と論ずけて思考と元に戻す。
とりあえず、早く書類渡して帰ろう。ここが最後らしいし。
そう思ったが吉日、すぐに"ユニさん"のもとへ近づき書類に手をかければ、
それはきた。
「やっほーユニチャン!月奈チャン来たんだってね。もうなんで教えてくれないのさ♪」
急に開いた扉(扉の外で言い争いの声は聞こえていたけども)、入ってきた全身真っ白(本当に白好きみたいだ。マシュマロの色とか言ってたな確か)、崩れない笑顔(笑顔以外見たことねー)。
全部どうでもいいけど、こいつ死んだんじゃなかったの?
「久しぶりだね月奈チャン♪3年ぶり?」
「どうも、私からすれば1年もたってませんが」
「あーそうだったね。でももう1年たったんじゃないかな?こっちに戻ってきてから過去にとんだんでしょ?そして、過去でも結構な日数を過ごしてきた…こっちでは数日だったけどね。違う?」
「ある程度はそのとおりかと、日数なんて気にしてなかったので特に。ところで私は綱吉から貴方は死んだと聞いてたんですが、生きてたんですね」
「え?死んだよ?まぁ未来では、の話だけどね。あの後別な世界で全部やり遂げたけど暇になっちゃって、そのときユニチャンが助けてくれたんだよね」
「へぇ、そうですか。」
「自分で聞いてきたのに凄い反応薄いね月奈チャン」
「通常ですよ」
言ってること凄い電波だけどきっと平行世界というやつなのだろう。カード○ャプターさ○らみたいな話だと思う。同一だけど全く違う存在。よくある設定ってやつだよね。
そんな夢物語が現実になんの用だ、とは、もう言わないこととした。
「…月奈チャン、きみ、正チャンと同じ目で僕を見るんだね」
「?」
「いや、正チャンとは少し…かなり意味合いが違うかな?」
「その"ショウちゃん"は知らないけど、結局のところ何が言いたいんですか?」
「んー…あのさ、僕と初めて会ったときのこと覚えてる?」
「まぁ」
何を急に言い出すんだろうかこの電波わ。
「僕も未来の月奈チャンに初めて会ったときのことも、過去の…今の月奈チャンに会ったこともちゃんと覚えてるんだけどね。…まぁ簡単に言わせて貰うとさ、」
「白蘭!」
「なんでそんなに早い段階で、未来の月奈チャンよりも酷い症状になってるの?」
そこに写るのは純粋な疑問と、好奇心。
にんまりと口に弧をかきならがも本当にわからないといったようなイントネーション。
いや、まぁそんなこと私に聞かれても全くわからないわけなのだが。
え?症状って何病気?病気だったの私?症状ってまさかコミュ障じゃないよね?いや、落ち着け私あれは症状じゃない。障害だ。じゃあ症状って?よくキャラ化するのを何々症とか言ったりしてたけどそんな感じ?厨二病とか?いや自分が厨二病なのは知ってるんだけどさ、かっこいいの好きだし。正直憧れるみたいな。でもマフィアに関わるとかそんなの望んでないよ、キャラもいないし。第一いい迷惑だし。てかまぁよくもないしただの迷惑だし。ああトリップしたいトリップしたい、トリップ先でキャラと絡みながらマフィアになったり人殺したりしたいよ。現実に夢はいらないと何度言えばわかるんだ。っておっと思考が全然違うとこいっちゃった。
とりあえず"ビャクランさん"が言うに、私は病気らしい。
今度病院へ行こうと思う。
「はぁ、ご忠告ありがとうございました」
「…言っておくけど病気じゃないからね?」
「え?」
「え?」
どうやら病気ではないらしい。
んじゃなんだ、と思ったところで"ユニさん"が話題を変える気満々で書類の話をしてきたではないか。
どうやらかなり聞いて欲しくないようなので"ユニさん"にのっておいた。
「では、ついでにこの書類を沢田さんに届けてくれますか?」
「あぁ、はい。わかりました」
「ありがとうございます」
にこり、と微笑んだ顔もキューティクルだこと。
あ、これ毛のことだった。
ほどよいボケを脳内でかました後、"ビャクランさん"を一目みて、頭を下げてその場を去った。
―――引きこもりの大空。
そう彼が口にしたのは、見逃さなかった。
引きこもりと白色
(律儀に守ってくれるだなんて)
(相変わらず、気まぐれだなぁ)