引きこもりと子供



無知から智将に、無力から最強に。なんて、

なれる程落ちこぼれの名は伊達じゃない。


「…つーことだ。ここまでで何か質問あるか?」

「別に。何も。」


私が知りたかったのは"ジョットさん"とは何者なのか、という点だけだったのに意外とほいほい余計なものをつけて色々教えてくれた子供家庭教師。

例えば"ジョット"はボンゴレ1代目だったとか、
例えば"ジョット"は私達の曾曾曾お祖父ちゃんだったとか、
例えば"ジョット"は日本に渡るとき沢田と名乗っていたとか

他にもまぁ"ジーさん"のことや"アサリさん"、"アラウディさん"や"ランポウさん"に"ナックルさん"…それと"スペードさん"について教えてもらった。
正直ここの部分はどうでもよかった。


「そうか。…で、オメーは初代達に会ってきたとかぬかしてんだろ?」

「ぬかしてる、というか本当のことなんですけどね。主にあなたのせいで。」

「俺は特殊弾なんて仕掛けてねえ。オメーの体質のせいだろ」

「まぁ移動したのは私の体質のせいかもしれませんが、移動しなくてはいけない自体に陥ったのはあなたのせいです。ちゃんと反省したほうがいいですよ。家庭教師でしょう?」

「…オメー…変わったな」

「…そうですか?なら、あなた達『マフィア』のせいでしょうね」


何度も殺された。その原因は全て『マフィア』になった兄のせい。
何度も殺された。その度に色々な『現実』を見せられた。
何度も殺された。その度に酷く『心』が冷めていった。

何度も殺され、何度も死んで、何度も生きた。

その度に真実を知、戦いを見、人をも殺した。


「色々な体験をして何も変わっていなかったら、むしろ私はそうゆう『人』だったんでしょうね」


言っていない事実は沢山ある。
私は主にどこに飛んで誰に会ったのかくらいしか言わない。

そこで起きた『こと』など、話す気にもならないからだ。


「………」

「さて、知りたいことは知れたのでこのへんで。いらないことまで教えてくださりありがとうございました。失礼してください。」


失礼します、じゃないのはここが私の部屋だからだ。
見られて危ないものなんて…PCのお気に入りにぐらいしか入ってないけれど、というかきっともう私がいない間に私の部屋は隅の隅まで調べられているだろうが見られていい気はしないものだ。


しっしと手を振れば、私のことを睨みつけながらも出入り口へと向かう。

扉に手をかけたところで、振り向かずに子供家庭教師は言葉を吐いた。


「テメーが過去で何をしてきたかは聞かねえ、教えるつもりもなさそうだしな。でもな…」


一拍あけて、体に突き刺さるような痛みのような、重みのようなものが圧し掛かる。
この重さは、今まで散々体験してきた、殺気というやつだろう。

けれど…まぁ、
もう、怖くない。


「テメーがツナに危害を加えるってんなら、今度こそ…いや。この時代に戻ってきた瞬間に殺す」


それだけ言い残して去っていく子供家庭教師。

その後姿に、凄く包丁を突き刺したくなった私は何も間違っていないと思う。



引きこもりと子供
(…え?)
(あいつ、バカ?)

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