引きこもりと犯人



最近、…というかさっき。兄の無事が確認できた。


「ん〜…で?親子の感動の再会もそこそこにまたパソコンですか?」

「もとはと言えば全部貴方のせいですけどね、"スペードさん"?」


逆算すれば【ピー】歳の彼に目を向ける。
その姿は、つい先程見ていた姿となんら変わらない。そう、先程泣き崩れていた姿と…何も。

妖怪か何かなんじゃないだろうかと思いながら相対するような形で腰掛ければ、ヌフフとまた残念なイケメンタグがつけられるであろう個性的な笑い方をしてきた。


「月奈、貴方今変なこと考えましたね?」

「いえいえ、ただ笑い方が相変わらず個性的だと思っただけですよ。ところで面倒なのでさっさと本題に入らせて頂きますが…あなたは妖怪か何かですか?」

「本題ってそっちですか?」

「逆算すると大体【ピー】歳なんですよ」

「あのとき呟いていた恐ろしい年齢がまさか私のことだとは思いませんでした」


少し顔を青ざめて言う"スペードさん"に、気づいていなかったのかといった視線を向ける。
まぁずっと生きていたとしたら年齢なんて数えてもいないだろうし、もしくはあの時代から今の時代まで飛んできたとしたらそもそも年齢なんて関係ないのか。

…後者の可能性を踏まえたら特に問題ないことにきづいた。


「それよりもっと気になることがあると思うんですが?」

「もっと?あぁ、綱吉になんで毒を盛ったのか、とかですか?」

「なんで以外とあっさりしてるんですか、一番最初に問い詰める場所はそこでしょう」

「…あー、まぁよくある復讐小説ですよね。ボンゴレに無駄に反応してた"ジョットさん"、普通の金持ちにしてはどこかおかしい城内、極めつけにあんな戦いに巻き込まれればオタクなら予想つきますよ。」

「…オタクなら、なんですか」

「はい。オタクなら。」


まぁ普通なら世代に渡って、てのが普通だろうけど…。
"スペードさん"なら誰かに任せるんじゃなくて自分でなんでもやってそうだなぁ、と考えれば普通に納得できてしまった。

包容力があるんじゃなくて、諦めが早いだけなのだ。


「一つ質問なんですけど、まさか私のこと知っておきながら犯人候補に私に仕立て上げたわけじゃないですよね?」

「なんでわかったんですか?」

「まさかだったお」

「…お?」

「なんでもないですよ」


まさか本当に私のこと知っておきながらやったとは…んじゃあれか?用意した毒は私のせいだとでもいうのか?私があのとき"ジョットさん"に毒を渡さず死んでいればよかったのか?ん?

きっと私が毒を渡さなくてもなんら別な形で兄は殺されそうになっていただろうが、ほんのり今回兄が倒れたのが自分のせいだと思うと後ろめたさが出てきてしまった。


「ん〜まさかきみが私のことをあの時点で知らないとは思ってもいませんでしたよ」

「まさか私があなたのせいで殺されてあの時代に飛ばされるなんて思ってもいませんでしたよ爆発してください」

「ヌフフ…つまり私が彼に毒を盛らなければああして会うこともできていなかったわけだ」

「そうですね実にいい迷惑でしたよ本当、段々私が人間からかけ離れていくじゃないですか。」

「きみは人間ですよ。そう、ただの人間。」


落ちこぼれの大空なんて、おこがましい程の人間です。

にこり、と微笑みながら言う"スペードさん"の言葉に棘なんて感じない。
ただ純粋に相手の反応を楽しんで言ってるだけって感じだ。

いやまぁ、感情なんて読み取れないから実際は棘しかないのかもしれないけれど。


「どうせなら引きこもりの大空って言われたいんですけどね」

「そこなんですか、というか私が言ったのは『きみは大空と呼ばれること事態おこがましい程の人間なんですよ』というところなんですが…」

「でも呼ばれるなら落ちこぼれより引きこもりのほうがいいじゃないですか。あ、自宅警備委員でもいいです。」

「落ちこぼれから挽回することから初めてくださいよ」

「だが断る」


殺されてはたまりませんからね。

無心に呟けば、また彼は笑みを口に浮かべた。




引きこもりと犯人
(何度も殺されてる人間が)
(なにを今更と言われそうだけどね)

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