これで死ねば私はまた戻るのだろうか。
『…テメー、その方になにをした』
「…すいません何言ってるか全くわからないので通訳呼んでもらえませんか?」
『おい、こいつが喋ってる言葉イタリア語じゃねーぞ』
『どうする、何言ってるか全くわかんねーぞ』
拳銃を私に向けたまま、仲間同士で会話する彼等。私の処分の仕方でも話しているのだろうか?それにしても何を言っているか全くわからない。私は英語もできないんだ。英語以外の言葉なんてわかるはずがないだろう。
というか紅茶飲まないなら下げていいかな、腕疲れる。
『とりあえず殺しちまえばいいんじゃね?』
『だって1人ここに忍び込ませた鼠がいるっつー話だったじゃねーか』
『これがそれだったらどうすんだって?いいじゃないですかもう。提案者が死んでるみたいだし』
『気絶だったらどうすんだよおい』
『いや、明らかにあの顔は死んでるね。胸も上下しねーし』
いまだにイタリア語で話し続ける彼等。一体何の話をしているんだろう?あれ、それとも何か私問われているのだろうか?いや、それはないな。明らかに会話している雰囲気だ。
私があのメイドだと思われているのか、どうなのか。
思われているなら万々歳だけどこの状況じゃ凄い勘違いでもない限りそうはならなそうだ。
ぼぉっと眺めていると、彼等の背後に人影一つ。
そして、彼等はその人影に気づく前に絶命していた。
「…おかえりなさい?」
「まだ終わってないからそれは間違いだ、とだけ言っておこう」
そうですか、と呟いてその場で紅茶を引っ繰り返す。
"ジョットさん"は眼を見開いて少し驚いたような顔をしたけれど、飲むとか言われたら堪ったもんじゃないので全部死体にぶっ掛けた。
食器は、あとでこっそり捨てよう。
毒が入った飲み物が入っていた食器なんて、使えるかどうかさえわからない。
「…詳しいことはあとで聞く。とりあえず、お前は」
「別な場所に移動すればいいですか?」
「いや、お前は…俺と一緒にいろ。その方が確実だ。」
「はぁ」
なにこの夢小説的展開、全然嬉しくない。
あんたの近くが一番危ない気がする、とは言えずにそのまま彼の後ろをついていった。
引きこもりと死体
(そういえば生の死体見るの)
(はじめてだ)