実際、兄は凄くいっぱい背負っているらしい。
「…私の『罪』は何も背負わないで生きていること」
「そうそう。」
「綱吉に全て背負わせて生きていること」
「うんうん。」
「…で、どうしろというんですか?」
「……ん?」
笑顔のまま首を傾げる"ビャクランさん"。いや、だって、一体どうしろというのだ。
私は、誰にも何も望まれなかった。
つまりは、それは私の罪ではなく、兄にばかり望んだ皆の罪ではないのか。
"ビャクランさん"にそう告げれば、彼は少しきょとんとしたあと爆笑し始めた。
…別に笑わせる気は、なかったんだけどなぁ。
「ふは、あっははははは!やっぱり月奈チャンは過去だろうと未来だろうといつまでも月奈チャンなんだね…!ふふっ」
「はぁ…まぁ、私は私ですね。確かに。」
「ぷぷっ…あのさ、この時代の月奈チャンも全く同じこと言ってたんだよね。」
「あらまぁ」
「あらまぁって、あははっ!はは、ははははははは!」
「…そんなに面白いですか」
「ぷふふ…いや、面白いというかね…くくっ…酷く、今も昔も自己中だ、ぷっ、なぁって…くく」
「はぁ、」
いまだ笑い転げ続ける"ビャクランさん"に、酷く冷めた視線を送る。
今も昔も自己中って、いやまぁそりゃ人間誰しも自己中ですよ。自分がよければいいんですよあとは。
私の『罪』は背負わなかったこと。
でも、それはひっくり返せば、私は何かを背負わなくてはいけなかったわけで、
もしも、本来なら私がボンゴレファミリー10代目になることだったとしたら。
もしも、本来なら私が全てを納めなくてはいけないとしたら。
もしももしももしももしももしももしももしももしももしももしももしももしももしももしももしももしももしももしももしももしももしももしももしももしももしももしももしも、
もしも、私と兄は、本来ならば、1人だったと、した、ら。
「…そんなわけ、ないか。」
本当は1人だけだったとしても、この世界では2人生まれた。
なら、2人じゃないといけなかった理由がもしかしたらあるかもしれない。
…いやないかもしれないけどね。
「…ねぇ、"ビャクランさん"」
「ふふ…なぁに?月奈チャン♪」
「それで、結局私を殺さなかった理由はなんですか?」
「気分、かな♪」
笑顔でいいきる彼に、私も無表情を崩さない。
なんの使い道もない人間を殺さずにとっておく、だなんて。やっぱりただの気まぐれだったようだ。
「そうですか」
「うん。落ちこぼれの大空に使い道はないからね。」
「そうですか。できれば落ちこぼれじゃなくて、引きこもりにしてくれませんかね?」
「なんで?」
「引きこもることに生きがいを感じているからですよ」
「そ。」
じゃあ永遠に外に出ないでいる?
それも、いいかもしれませんね。
――――パァンッ
引きこもりと未来
(まっしろいせかいに)
(こんにちは)