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とある忍と智将の話 02

「だーかーらー、俺様越後に向かってたんだって!そしたら道がわからなくなったからお宅の兵に訊いたら曲者扱いされたの!」


『忍が道を間違えるなど、ましてや敵兵に道を訊くなど…どうせ嘘をつくなら真っ当な嘘をつけ。それでも忍か貴様』


「Σ最後の一言、グサッときたんだけど!!」



猿飛佐助(仮)に尋問と言う名の質問をしていくうちに、やはり僕の違和感は大きくなっていった。


まず始めに彼ほどの手練れならば僕が尋問する前に逃走でも何でもするだろうし、だいたい越後と安芸の道を間違えるだなんて事はしないだろう。


だって真逆だよ?
安芸と越後って。
どうしたら道を間違えるのさ。
僕の知っている彼にはあり得ない失敗だよ。



『まず越後への道をどう間違えたら安芸(ココ)に着くか説明するがいい』


「いや〜何かね、俺様迷い癖ついちゃってるみたいでさ」


『………』



それは大問題じゃないの?
忍が方向音痴でしかも迷い癖があるってどうなのさ。


『…来る途中で気づかなかったのか?』


「全っ然」


『貴様のような忍が我が軍におれば、即斬り捨ててくれるわ』


「やっぱり?俺様武田の忍で良かったよ〜」



猿飛佐助(仮)を観察してわかった事、彼は僕の知る彼じゃないって事。
じゃあ彼は何者なのか、今からはそこに焦点を当ててみようかな。



『フン…とにかく貴様が我が領内に侵入した事に間違いはない』


「え、ちょ、その手に持ってるのは…」



興味本位で愛用の輪刀を手に持てば、彼の顔から血の気が一気に引いていくのがわかった。



『我が直々に手をくだしてやる。ありがたく思え』


「Σいやいやいやおかしいでしょ!?直々に手をくだされてありがたく思う人なんていないからね!?っていうか何?これ死亡フラグ立ったの!?俺様まだ死にたくないよ!!」



死 亡 フ ラ グ ?


何故彼がこの言葉を知っているんだ?
もしかして彼は…うん、そうだ、間違いない。


僕と“同種族”の人間。



『フフ、君みたいな人にこっちの世界で会ったのは初めてだよ』


「え……?」



そう言って輪刀を下ろせば、彼は状況が飲み込めてないらしくポカンとした表情で僕を見ている。



『君、異端者でしょ?』