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一忍を名乗る平成人の提案


甘味屋に入り一息。とりあえずお金使えてよかったなぁ、ってまぁ同じ戦国時代だから大丈夫だとは思ってたけどさ。

まぁたとえ使えなくても掏っちゃえばいい話だったからとくに困ることもないんだが。


「…で、これからどうするんだい?」

「彩芭」

「はい。さっきざっと女の子に聞いてきたけどやっぱり絶賛戦中の軍は武田と上杉で間違いないみたいです。そしてついでにここを治めてるのは特に大名とかじゃないけどまだ制圧されてない、まぁぶっちゃけ運がいい坊ちゃんが治める国ですね。あんまり人気はないみたいです。ただ金持ちですから貴族とかからの支持が高く、反抗しても力の差が歴然としていてどうしようもない状況です」

「…独裁国家か?」

「そうですね。反抗すれば無理な年貢を言い渡されるし、何人かは無理難題な任務を与えられ死亡しております。」

「なんじゃそれは…こんなに明るい場所なのに、そんな酷い輩がここを治めておるのか!」

「ここはまだ良い方でして、他は餓死とか当たり前らしいですよ。ついでにことの本人は毎日遊びほうけてます。まぁ、戦好きじゃないだけましかもしれないといえばましかもしれないんですが…ね。」


とりあえず報告は以上でーす。と伝えれば皆さんなにやら浮かない顔。
まぁ皆いい人だからねぇ、ああいっておくけど謀反起こした人がいい人、とかじゃなくて…まぁ性格がいいこちゃんみたな。そんな感じのいい人って意味だからね。

皆そんな性格だからここの偉い人がそんなんで許せないんだろう。でもぶっちゃけた話お前さんらがいいこちゃんなだけで大体トップは私利私欲のために動いてるやからばっかだからな。あ、ばっかって言い方はやめよう。勿論ちゃんとした人もいるから。


ベン、と三味線の音がなる。ちらりを目を向ければ、主である彼はこちらを見ていた。
少しだけ、笑いながら。


「つまりお前は、何が言いたい。」

「…たかが一忍如きに意見を聞くんですか?」

「彩芭」


ベベン、また弦を鳴らす。
そういや言ってなかったけど、我が主である長宗我部元親は俺様が平成人だということを知っている。もちろん、俺の世界で自分達がゲームという架空の人物だったことも、僕が未来人だということも。

だから彼は、ここが別世界だということもすぐに信じていた。
前例があるのだから、可能性として有り得るということを。

へらりとだらしなく歪む口を隠しもしないで、たかが一忍の言葉を吐いた。


「ここのお偉いさん、ぶっ殺して城頂いちゃいましょーや」


この世界なら、主要キャラ4人もいれば城一個落とすのなんて屁でもないんすよ。
だって、1人で落とせるんだからね。

その言葉は飲み込んで、主に視線を向ける。
彼はまた弦を鳴らして、笑った。


「上等」


周りの奴等も皆、笑っていた。




一忍を名乗る平成人の提案
(…そういや甘味屋っていう公の場でこんな話していいのかい?)
(………)
(…よし、善は急げということでさっさと潰しに行っちゃおうか。準備される前に。)


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